
ネット社会が切り拓いた潜在市場創出という仕事
私が顕在市場に興味がない理由
私は、潜在マーケットが大好きです。未だない市場、未だない商品、未だない価値。それを創り出すことに、最大の喜びを感じます。生き甲斐と言ってもいいでしょう。その反面、顕在マーケットには、驚くほど興味がありません。伸びている市場とか、売れている商品とか、聞いた瞬間に興味を失ってしまいます。
多分これは、役割分担なのだと思います。どちらが正しい、というものではないし、どちらが間違っている、というものでもない。きっと、どちらも、無くてはならない仕事なのです。まだ誰も気づいていない、新たな価値を見つけ出す。それは、新種の生物と出会うような、楽しさ。その生物を、見たい、欲しい、という人を増やす。それが、価値の商品化であり、市場づくりなのです。
価値の発見、価値との出会い。これは、もはや趣味の領域です。お金を払ってでも、やりたい仕事。実際、境目研究などは、この領域の仕事です。価値の商品化と、新たな市場の創出。これは趣味というよりも、仕事に近いです。つまり、私にとってのマネタイズ・ポイント。しんどいですが、やりがいはあります。
潜在マーケットのつくり方
まず、商品化。発見した新たな価値を、商品に変える仕事。商品化には3つの要素が必要です。コンセプト、名前、そして価格。誰にとっての、どういう価値なのか。それは、どのように新しいのか。手に入れたら、どういうことが起こるのか。それを言語化したものが、コンセプト。
コンセプトに力があれば、人が集まって来ます。欲しいという気持ちを、高めてくれます。でも、コンセプトのままでは、売れません。売るためには、名前と価格が必要なのです。名前はとても重要です。覚えやすく、広まりやすく、欲しくなる名前。価格設定は、潜在マーケットでは自由です。重要なのは、こちらが価格をきちんと提示すること。
市場の創出には、オウンドメディアを使います。ネットという大海原に、人が集まる岩礁をつくるのです。コンセプトとコンテンツで人を集め、集まった人が欲しくなる商品を、そこに並べる。メディアは時間と共に、マーケットへと変化します。
新たなマーケットを生み出す仕事。私はそれが大好きです。でも、マーケットを管理して、大きくしていくことには関心がありません。だから私は、経営者には向いていないのです。
ひたすらニューマーケットを創り出す。そんな仕事が許されるのも、ネット社会のおかげ。好きなことへの極端な偏りが、一人ひとりの役割を明確にしていく時代なのです。
<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。