働き方

拡大基調のフリーランスの裏で顕在化し始めるマズい実態とは

投稿日:2018年4月9日 / by

ランサーズの調査で分かった増加するフリーランスの実態

フリーランスの拡大が止まらない。クラウドソーシングのランサーズ(東京都渋谷区、秋好陽介社長)はさきごろ、「フリーランス実態調査2018」を発表。それによると、2018年のフリーランスの推定経済規模が初めて20兆円を突破。日本の総給与支払額の10%を占める規模感だ。もはやマイノリティとは言えない勢力となる一方で、見過ごされてきた課題も顕在化し始めている…。

ランサーズ調べ

副業解禁も追い風となり、フリーランスの経済規模は堅調に増加。その人口自体は前年比でほぼ横ばいとなったが、個人の平均報酬は186万円となり、前年比12%の増加傾向となっている。報酬単価の増加は、副業の職種の変化からも透けて見える。これまで主流だった接客/作業系とともに、営業などのビジネス系が増加。単価の高い副業に取り組む人が増えたことがその要因といえそうだ。

手軽に仕事を見つけられるクラウドソーシングの浸透も、この潮流を後押ししているといえるだろう。こうしたいわゆる副業フリーランスの経済規模は、この4年で約3倍に膨れ上がっており、今後、さらなる増大が見込まれる。まさにポスト正社員へ迫る勢いだが、そうなるとこれまでは露骨には顕在化していなかったフリーランスの盲点が、大きな課題として浮き上がってくる。

ランサーズ調べ

フリーランスは、自由で誰からも束縛を受けない働き方として注目されている。今回の実態調査でも、そこがモチベーションを駆り立てる要素として1位となっている。一方で、雇用契約がないままに働いている状態であり、状態としては極めて不安定。単に仕事が定期的に入らないという以前に、雇用関係が発生していないことで、様々な不利益を被る可能性がある。

労働者としてのフリーランスを保護する体制が事実上ないという事実…

小遣い稼ぎ程度で、副収入を得るための副業なら、本業の収入があることでそうした問題は深刻になりづらい。だが、フリーランスとしての稼ぎが主となれば、そこには様々な問題が点在する。大きなものとしては、失業時の補償がある。そもそも個人事業主やフリーランスは、失業状態を定義しづらい。仕事と仕事の間を失業とは普通みない。だからといって、その期間が長引けば、結果的に失業状態となる。にもかかわらず、現状では何の補償もない。

2017年に発足したフリーランス協会は、賠償責任保険を提供している。天災時などの所得保障にも対応しているが、失業時のケアはない。契約時のトラブルで不利益を被った場合の明確な保護ルールもない…。会社員という枠組みから一歩外れることで、一転して、社会のセーフティーネットからこぼれてしまうのだ。

ランサーズ調べ

フリーランスは自己責任だから仕方がない――。かつてはそうした風潮も強かったが、経済規模が労働者の10パーセントを占め、人口に占める割合が17%となってくればもはや、労働者としての枠組みがないほうが不自然になってくる。実際、フリーランス大国のアメリカでは、家内労働者を最低賃金、超過勤務手当、休暇など、労働基準法に準ずる保護を受けられる州も出始めている。日本でも、働き方改革の流れの中で、フリーランス増大に関し「雇用類似の働き方に関する検討会」が実施され、その必要性も含め、フリーランスの保護等の検討が議論されている。

急速に拡大するフリーランスという働き方。会社に所属することが当たり前の時代が半世紀近く続き、これまでは社会の中での居場所を確保出来ずに来たが、社会構造が過渡期に差し掛かり、もはや看過できない状況になりつつある。クラウドソーシング企業は、フリーランスの労働環境整備に尽力しているが、民間でやれることには限度がある。まずは、そもそもの契約のあり方を厳格にするなどが初期段階では妥当な策となりそうだが、フリーランスが本当の市民権を得るためには、社会構築におけるパラダイムシフトも求められそうだ。

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