働き方

若者の就活がうまくいかない本当の理由とは

投稿日:2018年7月10日 / by

人材の不均衡解消に進化を続ける採用の最前線

人材不足が深刻だ。求人数>求職数が慢性的に続き、改善される見込みがない。そうなると企業にとって、いかに自社にマッチした人材を採用し、定着し続けてもらうかが最も効率的で重要な採用施策となる。ダイバーシティ経営が求められる風潮は、こうした状況をさらに難解にする。大きくうごめく就活の最前線から、人材最適化への道を探る――。


企業にとって、長年の懸案は若者離職率の高さだ。多額のコストをかけ採用した新卒が、3年足らずで辞めてしまう。ある調査では、「最初から長くいるつもりはなかった」という回答が4割を超えるなど、対策の立てようもない一端がみえ隠れする。採用担当者にとっては悩ましい限りだが、就職あっせんサービスはこうした状況をにらみながら着々と進化を遂げ始めている。

人物本位で若者の正社員就職をサポートする「就職Shop」

東京・北千住にこの7月オープンした就職あっせん拠点「就職Shopきたせんじゅ」。開店時間から求職者が絶え間なく足を運び、キャリアカウンセラーと面談している。若年求職者を対象に、主に中小企業を紹介することで、いわゆるメガ就活媒体と一線を画す同サービスは、離職率3割という状況の中で、利用者の高い満足度をキープし続けている。

7月にオープンした北千住店

「われわれが目指すのは、一人でも多くの若者がいきいきと働ける社会を創造すること。非正規、もしくは正社員経験がない、あっても短い若者は、正社員になる機会が少ない実状がある。一方で、中小企業は若者を採りたくても採りづらい状況にある。そこで両者をつなぐプラットフォームとして、就職Shopがある。少しでも可能性を拡げるために直接会うことにこだわり続け、書類選考はなし。人物本位で正社員求人を紹介することを重視している」とリクルートキャリア・就職Shop推進部の中川竜宏氏は説明する。

新卒の就活ではどうしても自分の希望や企業認知度を優先し、企業選びをしがちだ。だが、それでは本人との適性は置いてけぼりになる。そこで就職Shopでは面談にこだわり、求職者の思いや考えをしっかりとヒアリング。それを踏まえて就職先を探す。ある意味で一般的な採用フローとは真逆ともいえる非効率なやり方で可能な限り求職者に寄り添い、若年求職者を全面バックアップ。就職後の定着率アップにつなげている。

面談重視で若者に寄り添いながら職業紹介する就職Shop

2006年に一号店舗が開設されて以降、同サービスへの登録者は10万人を数え、順調に増え続けている。それだけでも高い支持率の証といえるが、登録者が友人紹介2割という高水準なことも、求められていたサービスというエビデンスとして十分だろう。肝心の社員定着率も極めて高いといい、効率重視のこれまでの若者採用に代わる人材紹介になり得るポテンシャルは十分ありそうだ。

既卒・第二新卒専門の就活サポートで支持率上昇中のUZUZ

既卒・第二新卒専門の就活サポートで躍進するUZUZも、“じっくり型”の就職支援で若者支持率を伸ばしている。一度失敗した感が漂いがちな既卒・第二新卒。そうした思いにスタッフが限りなく共感しつつ、マッチした企業へ導く。

既卒・第二新卒専門の就活サポートを行うUZUZ

同社が求職へ割くサポート時間は、平均20時間。さらにスタッフの多くが元既卒・第二新卒。高い共感性と惜しみないサポート体制で濃密に求職者をバックアップすることで、同社は入社後1年の定着率90%超を実現している。

中途採用は釣り堀型からトローリング型へ進化

中途採用も様変わりの様相を呈している。これまでは、求人サイト経由で求職者が希望の企業へエントリーするスタイルが主流だったが、人材難から状況は徐々に変化。昨今は、ダイレクト・リクルーティングで、企業自らが欲しい人材に直接アプローチ。その獲得に乗り出す動きが強くなりつつある。

優秀人材に直接アプローチし、その成果を表彰された企業の担当者

ダイレクト・リクルーティングを有効に活用し、優秀人材の確保を成功させている企業は、専門部隊を結成し、綿密な計画を立てて欲しい人材をリストアップ。一本釣りするなどで意中の人材を採用。即戦力としてジョインさせ、新規のプロジェクト等の推進を加速させている。こうなるともはや、採用の域を超え経営戦略の一環といえるが、人材難の昨今、もはや優秀人材の獲得はそれだけ重要で、事業拡大には不可避といえる。

かつて採用は、人員確保の印象もあったが、いまや企業の将来を左右する戦力増強の意味合いが色濃くなっている。各企業の人事部門の強化と並行し、人材サービスも手間を惜しまないフィルタリングで求職者にふさわしい企業を選ぶスキルに磨きをかけている。そこで求められるのは、高い学歴ではなく、その人材がどんなことができてどんな成果を出すのか、といったポテンシャルを見極める目だ。

AI採用も注目され始めているが、健全な形の人材不足解消のカギを握るのはやはりヒューマンパワー。データだけでは、人材の思わぬ可能性を発掘するのは難しい。ただし、そのためには、求職者も企業の人事担当者も人材サービスも手間を惜しまず、汗を流し、もがき続けることが必須であることは言うまでもない。

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