働き方

社長に任期が必要な根源的な理由とは

投稿日:2018年8月6日 / by

変人・安田の境目コラム

受け入れられなかった3つの「終わり」

経営者として、受け入れるべき「終わり」。だけど私には、受け入れられなかった「終わり」。それが三つあります。

ひとつ目は、社員の終わり。つまり社員が辞めてしまうこと。社員は会社のものではないし、ましてや社長のものではありません。にも関わらず勝手に感情移入し、勝手に固執していました。辞めたい、という社員を責めてしまう。辞めて幸せになる社員を祝福できない。とても歪んだ、小さな人間でした。

二つ目は、事業の終わり。私はずっと、新卒採用に固執していました。新卒採用は100%素晴らしい。そのコンサルティングには価値がある。そう確信していました。ある意味その確信は、正しかったのだと思います。新卒は素直で、育てやすく、企業文化を育みやすい。でもそれは、雇う側から見た理論。素直で育てやすい人材ばかりが、増えていく国や社会。それは健全と言えるのでしょうか。

三つ目は、社長の終わり。会社が潰れてしまったので、私は仕方なく社長業を終了しました。でもそれは、私の意思ではありません。辞めどきを間違えた、と思っているわけではありません。私にはそもそも、辞める気が無かったのです。それが良くない。

辞めることを前提に経営することが重要な理由

辞めないことを前提に経営する。その気持ちはとても大事だと思います。でも同じくらい大事なのが、辞めることを前提に経営すること。今では確信をもってそう言えます。なぜなら役割には必ず終わりが来るから。年齢的な限界が来る。出来ることの限界が来る。だから引退したほうがいい。もっと適した人に引き継いだほうがいい。それも正しい判断です。

でも私が言いたいのは、もっと根源的な問題なのです。大統領にも、総理大臣にも、任期があります。社長にもなくてはならないのです。なぜなら、辞められなくなるから。社長ではない自分を生きられなくなるから。


<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
yasuda21965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。

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