働き方

名前で呼べば生産性が向上し、ミスも減るは本当か

投稿日:2018年9月27日 / by

職場では役付けで呼びますか、名前で呼びますか

「部長!」、「◇▽課長」。上司を役職で呼ぶ会社はいまだ少なくない。一方で、「◇◆さん」とさん付けで呼ぶ会社も増大している。組織形態が、ピラミッド型からフラット型へシフトする中で、より機能しやすいのが「さん付け」というのが、昨今の潮流ではある。

「お前」と呼ばれ、退社した社員が話題になっていたが、職場における呼称は少なからず居心地やモチベーションに影響することは確かだろう。企業と社員の夢の同時実現を目指すジーブーン(株)は、社員をあだ名で呼ぶことを義務付けている。

「弊社が目標にしているのは、ただ生活のために働くのではなく、ビジネスを通して自分の夢をかなえること。ニックネームは、単にカジュアルさだけでなく、その名に自分の夢が入っていることを絶対条件にしています。常に夢を忘れないための施策でもあるからです」と同社後藤稔行社長は説明する。

医師不足調整の人材企業MRT(株)も社員同士をニックネームで呼び合う。今や当たり前のようユニークな呼称が飛び交う同社。だが、かつては管理職は役付けで呼ぶ堅いムードだった。それが、社内イベントの出し物で劇を披露し、各自にキャラネームをつけたところ、作業がはかどり、チーム力が向上。それを機に、なんと翌日から制度化された。

「ニックネーム制を始めてからは、余計な言い回しがなくなり、コミュニケーションが活性化。スピード感が増しました。その場に『マロニー』がいたこともあったので、導入は即断即決でした」と同社担当者は、当時を振り返る。ちなみに「マロニー」とは、同社社長の馬場稔正氏。制度に例外はない。

実験で明らかになった名前で呼ぶ効果

ニックネームにせよ名前にせよ、自分に親しみのある呼称で呼ばれて不快になることはない。実は、この感覚を明らかにした研究がある。カオナビの研究機関「HRテクノロジー総研」と慶應大学大学院経営管理研究科の岩本隆研究室が行った共同研究「『顔と名前の一致』が社員のパフォーマンスに及ぼす影響」だ。

実験対象は、社会人及び大学院生14人。実験内容は簡単な算数テストを1分×5回実施。試験官が名前を呼ぶ群と呼ばない群に分け、結果を比較した。その結果、名前を呼んだ群の正答数が呼ばない群を常に、かつ大幅に上回った。誤答率でも名前を呼んだ群が常に呼ばない群を下回った。このことから、名前で呼ばれることで参加者のやる気および集中力が高まり、解答スピードや質がアップしたと考えられる。

実験は参加者が少なく、結果はあくまで参考レベルだがその差は明白で、社員を名前で呼ぶことが生産性向上やミスの抑制に有効であると考えるのは間違っていないといえそうだ。HRテクノロジー総研所長の内田壮氏は、結果を受け「顔と名前の一致に加え、経歴、性格、スキル、希望などより深く社員を理解することで個別化されたマネジメントが実現。より高い効果が得られると考えています」と話し、組織のフラット化が職場活性化につながる可能性を示した。

「私は○○で部長をやっていました」と転職の面接で胸を張り、面接官にドン引きされたというウソのような本当の話があるが、多様性の時代に肩書はあくまで記号のような意味合いしか持たなくなる。企業においてより重要になるのは、いかに個々がその才能を最大化し、それぞれが輝けるチーム作りを実現するかだ。決して簡単な命題ではないが、そのヒントは意外と身近なところにあるのかもしれない。

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