イトーキが取り組む、ハード軸の働き方変革の革新性
オフィスの機能は働き方を変革できるのか【前編】
イトーキが2018年秋に本格始動した働き方改革が革新的だ。オフィスの機能性を極限まで高め、それによって社員の生産性を最大化する――。ビジョンや制度ベースでなく、ハード面を軸にワーカー自らが働き方を自律的にデザインできる環境を実現しようとするアプローチ。それは、オフィスがどこまでワーカーのポテンシャルを引き出せるのかという点で極めてチャレンジング。同時に変革への妥協のなさがにじむ点でどこまでもアグレッシブだ。
オフィスを働き方改革の推進力にする
働き方改革を進めていけば、そのプロセスでオフィスのあり方を見つめ直すフェーズに行き当たるのはある意味自然といえる。「どうすれば生産性が高まるのか」「どうすれば社員がやりがいを持って働けるのか」。そうした命題は、制度や仕組みだけで解決するには不十分だからだ。そこに、それらを有効活用できるハードとしてのオフィスが伴って初めて、解を見出すベースが完成することになる。
イトーキが取り組む働き方変革プロジェクトは、まさにこの仮説を妥協のないオフィス変革を軸に証明する壮大なチャレンジといえるものだ。同社本社移転プロジェクトリーダーの藤田浩彰氏は言う。「オフィスというのは価値創造の場。それは昔から不変。一方で、技術革新などで周辺環境は変化している。今回のオフィス変革の実施目的は未来を見据え、ワークスタイルを時代に最適化するため。我々にとっては移転する新オフィスが、変革のドライブエンジンとなる」。
目指すのは「ABW（Activity Based Working）」の浸透
目指すのは、社員個々の自己裁量権を高め、場所や時間にとらわれず、活動をベースにした新しい働き方戦略「ABW（Activity Based Working）」の浸透だ。それは、単に無駄を省くだけに留まらず、より生産性の最大化を実現。さらには社員個々の心身充実までをも視野に入れる「ウェルビーイング」の考えも取り入れるなど、従来の「働く」のあらゆる負の要素を解消しつつ、そこで働くことに必然や充足を感じさせるような考え抜かれた理想のワークスタイルの追求ということになる。
それを象徴する一つのトピックがある。移転先ビルのこだわりだ。選定にあたり、多くの候補ビルを検討した藤田氏。そうした中で決め手となったのは、新オフィスのビル全体としての総合力だった。
「数多くビルを検討したが、日本橋の新オフィスはアクセス面はもちろん、コワーキングやフィットネス、飲食などの付帯施設も充実していた。オフィスなしでも仕事ができる環境がある中で、そこへ行く意味がなければ移転する価値はない。オフィス機能自体の充実はもちろんだが、活動をベースに自由にいつでもどこでも誰とでも働ける環境に実効性をもたせるためにはここがベストだった」（藤田氏）。
目に見えない部分にまで妥協せず、厳選した新オフィス。全ては、「ABW」遂行のためだ。
社員を自律的にするオフィスづくりとは
もっとも、抜群の環境を用意し、自己裁量を最大化すれば社員が自律的になるほど単純なものではない。それが事実なら、すでに多くの会社が自走型を実践しているはずだ。少なくとも、よほど自律的な社員が集まった組織でなければ、その実践は現実的といえないだろう。そこで同社が取り組んだのが、オフィスによる自律の促進だ。
電話/WEB会議（右上）、高集中（左上）、アイデアだし（下）など目的別に分けられた居室が生産性を高める
具体的には、オフィスを多様な活動ごとの専用空間で構成している。例えば、集中したい時には「集中ルーム」、オープンに会議したい時にはそれにふさわしい空間、リラックス専用のスペースも用意…といった具合に、新オフィスには社員がその活動にあった場所を自由に選択できるよう多様な目的別の専用空間が用意されている。もちろん、特定の場所へ縛り付けるデスクトップPCや固定電話は原則廃止。ノートPCとスマホを標準とし、社員は設置された専用空間を自在に行き来するなどで、生産性の最大化を図ることが可能になっている。（後編に続く）
＜会社概要＞
社名:株式会社イトーキ ITOKI CORPORATION
創業:明治23年12月1日
設立:昭和25年4月20日
資本金:5,277百万円
従業員:1,964名（平成29年12月末現在）
本社:〒103-6113
東京都中央区日本橋2-5-1
日本橋髙島屋三井ビルディング
取扱商品:
【オフィス関連事業】
ワークステーションシステム／デスク／ローパーティション／
事務・会議チェア／テーブル／保守サービス業務など
【設備機器関連事業】
オフィス建材内装設備／移動間仕切・可動間仕切／
セキュリティ設備機器／工場・物流設備機器／商業施設機器／研究施設機器など
【その他】
学習デスク・チェア／書斎・SOHO用家具など
HP:https://www.itoki.jp/
