働き方

オフィスが社員の自律を促すハード型働き方改革の全貌

投稿日:2018年11月28日 / by

オフィスの機能は働き方を変革できるのか【後編】

オフィスを軸にした働き方改革の推進――。イトーキの新本社オフィス「ITOKI TOKYO XORK」(東京・日本橋)ではハード面を軸に、組織の新たな価値創造と社員のウェルビーイングの実現を目指す新しい働き方「XORK Style(ゾークスタイル)」が展開されている。制度や組織構成などのソフト面から働き方改革を推進する企業とは一線を画す同社の働き方変革アプローチは、どんな可能性を秘めているのか。後編では、その詳細を検証する。

活動内容ごとに設定された居室が起こす変化

オフィス内の各居室を活動内容別に設定する。すると、職場にどんな変化が起こるのか。ほぼ確実に社員の行動はこれまでとは一変する。つまり、やることを軸に活動スペースを選択することがスケジューリングのベースになるということだ。これまでの日本のオフィスではせいぜい、自席か会議室くらいしか活動空間の選択肢はなかった。そのことが必ずしも生産性を下げる要因だったとは言えないが、活動との向き合い方が散漫になりがちだったことは否めないだろう。

居室は高集中、コワーク、対話、2人作業、情報整理、知識共有、専門作業、リチャージなど複数用意されている

それが、活動スペースを起点にスケジューリングするようになるとどうなるのか。例えば、きょうは「集中して仕事をする」と「アイディア出し」がある。だから、〇時から集中ルーム、◆時からアイデア出し専用ルームで、といった日程組みがされることになる。目的ありきのルーム選択となるだけに、自ずと気持ちも入りやすく、なにより居室は目的の最大化に工夫された空間づくりがされており、心身両面での生産性向上が期待できそうだ。

高機能な居室設計の裏に隠された驚きの事実

加えて、単なるオフィス変革で終わらない手の込んだ仕組みも組み込まれている。実は新オフィス移転にあたり生産性向上の数値目標が設定されているが、それを実現するために最適化されたキャパシティとなっているのだ。

情報整理(左)や2人作業(右)は作業を加速させ生産性向上に寄与しそうだが…

つまり、新オフィスでこれまで通りのペースややり方で作業に取り組んでいると、キャパオーバーになる。もちろん、活動は各自で継続できるが、空間機能を使いこなせばミッションをクリアできるというオフィス設計は、まさにハードによる半ば強制的な社員の“働き方改革”サポートといえ、ある意味革新的だ。

常にオフィスとともに歩んできた歴史があるからこその徹底したこだわりともいえるが、同社としてもどうしてもクリアしなければならないミッションであるからこその本気度の裏返しでもある。設定目標の達成期限は2020年。そこまでに、同社は新しいワークスタイルの可能性を検証し、一定の評価を下すことになる。オフィス変革をサポートする新サービスとしての展開も視野に入れるだけに、この試みでどんな成果を出せるかはある意味社運を左右するといっても過言ではないのだ。

「オフィスを取り巻く環境は大きく変化しているが、今後もずっとなくなることはないと考えている。ただ、企業と個人の関係性はデザインし直す時期に来ている。弊社が考える新しい働き方『XORK Style(ゾークスタイル)』が全ての企業の最適解になるとは思っていないが、我々としては働き方変革の伝道師として、得られた知見を包み隠さずオープンにしていきながら、まずはイトーキとしてやりきって、次世代の働き方の一つの答えを追求したい」(藤田氏)。

オフィスの存在意義を占うひとつのポイントになる挑戦

洒落たカフェのようなオープンな空間を贅沢に作り込んだり、最新設備を惜しみなく投入したり…とオフィスを創造空間として磨き上げることに躊躇しない企業は増大している。一方で、その投資対効果が不透明という側面はぬぐい切れていない。さらにはオフィスを廃止する企業も出始めている。同社の挑戦は、そうしたオフィスの存在意義にズバリ切り込むものであり、ある意味ではその究極の形ともいえる。

オフィスが永遠に不滅だとすれば、その機能性を追求することでどれだけの価値を生み出せるのか。そこがオフィスの存在価値を占うひとつの大きなポイントとなる。長いオフィス史の中でも初といえる、その難問に対するひとつの答えがひとまず、2020年には出ることになる。(了)

前編⇒イトーキが取り組む、ハード軸の働き方変革の革新性


<会社概要>
社名:株式会社イトーキ ITOKI CORPORATION
創業:明治23年12月1日
設立:昭和25年4月20日
資本金:5,277百万円
従業員:1,964名(平成29年12月末現在)
本社:〒103-6113
東京都中央区日本橋2-5-1
日本橋髙島屋三井ビルディング
取扱商品:
【オフィス関連事業】
ワークステーションシステム/デスク/ローパーティション/
事務・会議チェア/テーブル/保守サービス業務など
【設備機器関連事業】
オフィス建材内装設備/移動間仕切・可動間仕切/
セキュリティ設備機器/工場・物流設備機器/商業施設機器/研究施設機器など
【その他】
学習デスク・チェア/書斎・SOHO用家具など
HP:https://www.itoki.jp/

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