働き方

優秀な若手が辞めるケースが急増!深刻ながら必然のその理由とは

投稿日:2019年1月18日 / by

調査で分かったデキる若手の思惑

優秀な若手が辞めてしまった…。超一流企業でこうした事例が増えているという。そもそも若者の大手志向が減衰しているという話も少なからず耳にする。一体、若者の就職観にどんな変化が起こっているのか。

古野氏興味深いが調査しづらいこのテーマに切り込んだのはリクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所の古野庸一氏。対象は、規模300人以上の会社に新卒入社した25歳から32歳の515人。内412人が実際に転職に踏み切っている。

「優秀」の定義は難しいが、同調査では9項目の適応状況のチェックシートで高適応群と低適応群に分類。質問は「仕事にやりがいを感じる」、「力を十分に発揮できている」、「同僚に比べ高い業績をあげている」などで、肯定が多いほど高適応群へクラスタリングされることになる。

ごくシンプルにいえば低適応群は職場にうまくフィットしていない。一方、高適応群は十分にフィットして能力を発揮していると考えていいだろう。それを踏まえ、同調査の結果をみると、多くのことに合点がいく。

例えば転職を考えた理由については、低適応群は会社の将来に不安を感じていたり、方向性に疑問を感じていたり、業務に意義を感じられない、職場の雰囲気に合わないなどで高適応群を上回る回答率だった。要するに、会社に対しネガティブ志向なのだ。

一方の高適応群の転職理由は、仕事の領域を広げたかった、これまで以上に専門能力・知識を発揮したかった、働き方を見直したかったなどの項目で低適応群を大きく上回った。つまり、現状に満足していながらも物足りなさを感じている。

どうすれば優秀な若手をつなぎとめられるのか

どちらも転職を考えている点では同じだが、明らかに向いている方向が違う。問題はなぜ、これまでなら幹部候補生にもなり得る高適応群が転職を考えるのか、だ。成長を求めているのに「物足りない」。つまり、早い段階で会社の限界を見切ったのか、会社が若手の成長に追いつけないのか…。どちらにせよ、理由としては離職阻止は難しそうだ。

古野氏はその要因について次のように分析する。「人生や生活を考えた上で働き方を選択する傾向が強まっていることに加え、人生100年時代といわれる中で一つの会社こだわるリスクも察している。そうした危機感を抱いていることが成長欲求にもつながっているのでは」。会社寿命が20年を切ったともいわれる中で、若者自身がそのことを強く認識しており、会社依存でなく、自力での安定確保に動き始めたというのが根底にはありそうだ。

こうなると企業はますます人材確保が困難になりそうだが、対策はないのか。古野氏は、仕事の楽しさややりがいについての配慮、自立性を高める施策実施、退職時面談の重視、リテンション対象者の絞り込みなど7つの策を提案する。

「最優先ではないが労働条件が最低限のレベルにないと離職につながるので、そこはきちんとしたほうがいい。その上で、優秀な若手が辞める理由を一つずつつぶしていくような施策をきめ細かく行い、さらに定着して欲しい社員を絞り込むことも現実的でしょう」と古野氏。もはやビジネスの現場では旧来のルールが無用になりつつある。それだけに、本気で優秀社員を引き留めたければ、思い切った変革が求められそうだ。

いまの20代は、大企業神話崩壊を現場で体感した親世代のもとで育ち、終身雇用が幻想であることを肌で感じている。その意味では会社への忠誠心は端からないか、薄い。ましてや少子高齢化で慢性的な売り手市場。企業は、定着してもらうより、辞めても関わっていたいと思ってもらえる魅力的な製品やサービスづくりに注力する。そうした方針に切り替えることが、なによりの対策になるかもしれない。

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