
若い頃の物欲はどこへ行ってしまったのか…
<変人・安田の境目コラム>
世の中の空気はどうやって変化するのか
若い頃は欲しいものが沢山ありました。ポルシェも欲しかったし、ヴィトンのバッグも欲しかったし、ブランド物の服も靴も財布も、何もかも手に入れたかったのです。
ものが増えるとクローゼットに入らない。だから収納を増やすために引っ越す。新しくできたスペースにまた詰め込む。どんどんものが増えていく快感。それがいつの間にか不快感に変わりました。
持てば持つほど嬉しい時代から、適度に持っていれば満足な時代になり、今はできるだけ持たないことが快適な時代。歳をとったからでしょうか。いや、何か違う気がします。
まあ歳をとったのは事実ですけど。それだけが理由ではない。世の中の空気みたいなものが、変化したのだと思います。
世の中の空気。それって一体何なのでしょう。たとえば全員が右を向いている。それが左に向きを変える。そんな感じ。
一人一人の動きは些細なもの。ちょっと首をひねるだけ。何人かが反対側を向いて、それにつられて他の人も向きを変えて、やがて全員が反対側を向くようになる。
空気の変化は進化なのか…
たったそれだけのことなのです。でも人類が見ている方向が180度変わる。景色も変わるし、感覚も変わる。価値観も変わる。それが空気が変わるということ。
全身ルイヴィトンのおじさんは、確かに昔はカッコ良かったのです。似合わないアルマーニも、フランクミューラーも、身につけているだけでカッコ良かった。
今それがカッコいいのは、すごくお洒落な人か、背の高い男前の芸能人か、イタリア人だけ。普通のおじさんはカッコ悪い。
向きが変わったのです。それで景色が変わった。同じものが違って見える。ポルシェも、ヴィトンのバッグも、ブランド物の服も、違ったものに見える。
これを成長と呼ぶのか、進化と呼ぶのか、あるいは退化と呼ぶのか、分かりません。ひとつだけ確かなのは、変化したという事実です。
