働き方

知名度でなく、まずは「地名度」を上げる求人戦略の皮算用

投稿日:2019年2月27日 / by

エンジニアはしご酒オフィスツアー知名度より「地名度」アップ――。IT人材の不足が深刻化する中、特定エリアの企業が利害を超えて団結。目先の利益より、まずは地域の認知度を向上することで、腰の重いエンジニアを呼び込む施策を行うなど試行錯誤している。

新たなスタートアップの集結エリア「五反田バレー」

「五反田バレー」。そう聞いてピンとくると人は、かなりのIT企業通かもしれない。スタートアップやIT企業の多さから渋谷は「ビット(渋い)バレー(谷)」と呼ばれ、IT人材からの認知度も高い。比べて五反田にそのイメージを持つ人は、残念ながらごく少数派だ。

だが実は昨今、五反田エリアにスタートアップが急増。大崎も含む五反田地区には100社以上のスタートアップが集結している。その背景について、(株)マツリカ代表取締役Co-CEOで(社)五反田バレー代表理事の黒佐英司氏が説明する。

黒佐氏「五反田は渋谷六本木などより賃料が安く、活動拠点としても交通の利便性が高い。スタートアップにとっての好条件が揃っているのです。一方で人材を呼び込むにも知名度が低い。そこでエリアの課題を解決するために、五反田バレーを一般社団法人化しました」。

地域振興も視野に入れる五反田バレーは、品川区とも連携。エンジニア採用費用の一部助成やAI・IoT活用イノベーション創出事業への支援を受けるなど、官民タッグでの優秀人材呼び込みに取り組んでいる。

もちろん、求職者は地名で企業選びをするわけではない。するとしてもその優先順位はかなりの下位だろう。とはいえ、とりわけ不足が深刻なエンジニアに実際に職場に足を運んでもらうには、何らかのフックが必要になる。そこで先ごろ開催されたのが、その名も「エンジニア はしご酒オフィスツアー」だ。

知名度でなく地名度を向上させる狙い

黒佐氏はその狙いを次のように明かす。「普段の採用活動はオンラインがメイン。実際の職場環境を知ってもらいたいが、そのハードルは高い。そこで人材サービスのビズリーチのサポートを受け、よりカジュアルな接点を生み出し、企業の魅力を知ってもらう交流イベントして企画したのがはしご酒ツアーです」。

同イベントには14社のスタートアップが参画。あくまでもライトなオフィス見学ツアーながら、各社が「五反田バレー」の名の下、利害を超えてエンジニアをもてなし、「地名度」向上に一肌脱いだ。

はしご酒オフィスツアー来場者の評判も上々で、単なるオフィス見学では難しい集客に成功。求人市場でなかなか顕在化することのないエンジニア掘り起こしを果たせたようだ。

今回は採用に直結することが狙いでなく、あくまでもカジュアルな接点を持つことが主眼だったが、こうした施策を積み重ねることで五反田バレーの知名度が上がっていけば、ビットバレーに並ぶ、IT系スターアップの聖地として、有望人材が集まりやすい土壌も整っていくだろう。

知名度より地名度。若者を筆頭にする求職者の価値観はどんどん多様化している。同時に人口減で労働市場は売り手市場が続いている。認知度、企業規模、待遇の求人3大訴求軸の価値が暴落したいま、企業の求人/採用施策は手を変え品を変え、別の意味で多様化が加速していきそうだ。

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