電動キックボードで移動はどう変わるのか
都市のコンパクト化で浮上するマイクロモビリティの必要性
ちょっとした移動が手軽にできることで一気に利便性が高まるシーンは少なくない。ビジネスパーソンにとっての通勤、観光地における交通手段、過疎地での移動…。ささいなことだが、こうした不便が解消されることで、面倒や苦痛が一転快適になることは案外多い。
距離にすれば数百メートルから2キロ前後。この間を、手軽にさっそうと移動できれば、通勤ラッシュから解放されたり、バス停が遠く敬遠していたバスを利用できたり、あるいはそのまま目的地に移動できたり…。車では大げさ、自転車も置き場を考えると微妙な、徒歩15分から30分圏内をカバーする移動手段としてにわかに注目され始めているのが、「マイクロモビリティ」だ。
マイクロモビリティは、まさにちょっとした移動をカバーする手段の総称といえる。いくつかある中で、昨今もっとも有力な手段として活用されているのが、電動キックボードだ。キックボードの電動版で、乗り降りが楽かつ、電動なのでアップダウンや少し長めの移動も快適に行え、コンパクト化へ向かう街づくりの潮流とシンクロしながら広がり始めている。
諸外国の導入事例では、アメリカが18歳以上で免許が必要。ヘルメットの着用義務もある。フランス、シンガポールは免許もヘルメットも不要だが、走行エリアに制限がある。利用パータンは、置き場の決まったステーション型と乗り捨て可能なタイプがあるが、電動キックボードの気軽さでいえば、乗り捨て型の方が、使い勝手はいいだろう。
日本にも上陸した電動キックボードのシェアリングサービス
今年に入り、日本にもシェアリングサービスの一つとして電動キックボードが上陸。(株)Luupは2019年4月に国内では初となる自治体との連携協定を締結。マイクロモビリティによるインバウンド対応や社会課題解決を目指すことを発表している。
同社岡井大輝社長は、「人口減少時代は都市がコンパクトへ向かう。その時、あぶれるエリアをカバーするインフラとしてマイクロモビリティのシェアリングが必要になる。自転車ほどでなく、手軽に乗れて小回りの利く電動キックボードがその手段として適している」とサービス導入の狙いを明かした。
同社が使用する車体は中国製で、最高時速は20キロ以内。国内展開にあたっては特に安全面を重視し、危険ゾーン進入時の遠隔での減速を行うなどで、想定されるアクシデントを可能な限り予防する。自治体との連携はそれらを実証するためで、さまざまな状況を想定し、交通インフラとしての課題を徹底的に洗い出し、新しい“足”のひとつとして、その定着を目指す。
今回、実際に乗ってみたが、基本的にはキックボード同様スタートは助走から。その後は手元のレバーで加速し、ブレーキでストップする。現行モデルでは加速力が強く、女性や高齢者が戸惑う可能性も懸念されたが、実証実験の中でそうした点は解消していくという。街中での利用時は全てアプリで対応。乗降から支払いまで全てを手軽にでき、浸透すれば利用者も増えそうだ。巡行距離は3時間ほどの充電で40キロはあるといい、コンパクトだけにエネルギー効率も高い。
本サービスの開始は現状では白紙で、安全性が確保されるまで妥協なく実証実験を続けていくという。Xデーは不明だが、自動運転も開発が進んでおり、数年後には、マイクロモビリティの浸透も含め、街の交通インフラが様変わりしているかもしれない。