働き方

有給休暇の取得義務化に否定的な企業の言い分

投稿日:2019年5月9日 / by

エン・ジャパンの調査で分かった企業のホンネ

有給休暇の取得義務化に4社に1社が否定的。人材採用・入社後活躍のエン・ジャパン株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:鈴木孝二)が同社が運営する人事向け総合情報サイト『人事のミカタ』でサイト利用企業を対象に「有給休暇の取得義務化」についてアンケート調査で判明した。回答企業は610社。

エン・ジャパン調べ

2019年4月1日から企業に義務化された有給の取得。10日以上の有給が付与される全ての労働者に対し、毎年5日間、時季を指定して有給を取得させる内容だが、96%が「知っている」(内容も含めて知っている:63%、概要を知っている:33%)と回答した。罰則も伴うだけにさすがに高い認知度だった。

では、有給休暇の取得義務化について、実際のところどう思っているのか。「良いと思う」と回答したのは73%(非常に良いと思う:23%、まあ良いと思う:50%)。一方、「良くないと思う」は26%(あまり良いと思わない:21%、良くないと思う:5%)だった。4社に1社が否定的と考えると少なくない印象もあるが、その言い分はどうなのか…。

エン・ジャパン調べ

「個人の有給の取得予定は不明なことが多く年間計画が立てにくい。さらに、元々休日が多く少人数なので生産性が上がらなくなる」(流通・小売関連/1~9名)。「業務内容や勤務状況の改善がされないまま、表向きの有給のみを義務化されたところで、サービス残業やサービス出勤、持ち帰り残業など、ブラックな形態が増えるだけだと思う」(福祉/100~299名)。これらは、残業規制にも当てはまることで、理解できなくはない理由といえる。

こんな声もある。「有給休暇が10日程度の社員は、5日の有給休暇取得義務により、個人の病気等に使える有給休暇が減ってしまう」(広告・出版・マスコミ関連/10~29名)。「翌年に繰り越して長期休暇を取るなどの自由度を奪うことになる」(IT・情報処理・インターネット関連/300~999名)。これらは、企業側の都合も透けてみえ、やや言いがかりのような印象を受ける。

一方で、「非常に良いと思う」「まあ良いと思う」と回答した企業の声は「有給取得は働く側として当然の権利だと思うので、取得しやすい環境になるのはとても良いことだと思う」(医療関連/30~49名)や「法律が施行されなければ休みがとれないような企業にとっては、組織体系や業務量の見直しに繋がる良いタイミング」(サービス関連/100~299名)など真っ当なものが並んだ。

有給取得義務化定着への課題とは

エン・ジャパン調べ

調査では、有給取得の業種別の促進状況もあぶり出している。取得を促進している業種のトップ3は「金融・コンサル関連」(100%)、「商社」(79%)、「IT・情報処理・インターネット関連」(77%)。一方、取得を促進していないのは「広告・出版・マスコミ関連」(36%)、「流通・小売関連」(34%)、「不動産・建設関連」(27%)となった。仕事に区切りをつけやすい業種とつけにくい業種で明暗が分かれた印象だ。

エン・ジャパン調べ

また、有給の取得義務化にあたり、難しい点や課題についてもアンケートしている。最多は「人員不足」(65%)次いで「業務量が人に偏っている」(60%)となった。これらは全社員に公平に休みを取らせる上ではアルアルの課題で、企業にとっては悩ましいところだろう。

先進国の中で有給取得率が低い方を快走する日本。有給取得の義務化は、その汚名を返上する特効薬ともいえるが、否定意見にあったように業務そのものが減っているわけでも勤務状況が変わっているわけでもないという課題が横たわる。救いは、休みが多く残業が少ないほど生産性が上がるエビデンスがあることだが、そのためには抜本改革が必須で、日本に有給取得文化がしっくり馴染むにはもう少し時間がかかるのかもしれない。

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