
学び直しが標準になる時代の社会人学習のキモ
“現役”期間の延長で激変するキャリア設計
人生100年時代が意味するのは、シンプルにいえば“現役”期間の延長だ。これまで60歳だったものが、65歳が普通になり、いまや70歳になろうとしている。さらにもっと、となるのも確実だ。一方で、世の中のサイクルはどんどん短くなっている。そこでビジネスパーソンにとって、アップデートのための学び直しやリセットの必要性が一層高まっている。
学びはこれまで、大学まで通っていたとすればその後就職するとその機会はないのが一般的だった。社会人は実践を通して学んでいるともいえるが、それにしても一本道を突き進んでいる。終身雇用制度が機能していた時代ならそれも理にかなっていたが、いまやそれどころか企業寿命の方が働く期間の平均よりずっと短くなっている。
ほぼ半数のミドルがリカレント教育を行っている
エン・ジャパン(株)が運営するミドル世代のための転職サイト『ミドルの転職』上で、サイトを利用している35歳以上のユーザーを対象に「リカレント教育(学び直し)」についてアンケートを実施(回答=1,341名)している。それによると、リカレント教育を行ったことがあると答えたのは47%。ほぼ半数のミドルが学び直しを行っていることが分かった。

エン・ジャパン調べ
経営不振により突然、リストラ通告されることはもちろん、生き残りをかけて業態を180度転換する企業も珍しくなくなってくる。その時、スムーズにスイッチし、新たな道を走れるのか。何の知識もノウハウもない中で、業務に取り組むことはそもそも戦力としてどうなのか…。そうならないためにも、能動的に学び直しをすることが、これからは常識となるだろう。
学び直しをどこでするのか
拠点の一つとなりそうなのが大学院だ。なにより時間の融通をつけやすいことが大きい。社会人が通いやすいよう夜間開講している院も少なくなく、腰を据えて“学び直す”にはうってつけだろう。「公務員」「議員」であることが条件だが、明治大学大学院公共政策学科は、大卒でなくても入学を許可しており、キャリアのアップデートも可能だ。

立教大大学院はパーソルと提携し、社会人に必要な資質を育むカリキュラムを新設する
「全体として院を重視していく」(野澤正充副総長)と今後の方向性を明かす立教大学は、時代に合わせたコースを相次いで新設。社会人のリカレント教育を後押しする。AIに特化した大学院として「人工知能科学研究科」、そして「リーダーシップ開発コース」をともに2020年4月からスタートする。両コースともこれからの日本社会に強く求められる能力であり、キャリアアップやキャリアチェンジを考えているビジネスパーソンには狙い目だ。
もう少し手軽に学び直したければ、オンラインによる学習がいいだろう。JMOOCは、日本最大のオンライン講座でなんと無料で受講可能。累計の講座数は340におよび、100万人以上が学習している。Udemy(ユーデミー)は世界最級ともいわれる規模で、提供されるコース数は5万以上、講師は2万人以上にのぼる。オンライン学習の何よりのメリットは時間に縛られないこと。スクールに比べ学費が抑えられるのも魅力だ。
学んで教えるが当たり前の時代に
社会構造の変化による必要性の高まりが学び直しを推進する大きな要因だが、別軸でも学びを後押しする環境変化がある。誰もが講師になれる環境の充実だ。前述のUdemyは、受講はもちろんだが、講師になることもできる。ストアカは、個人によるスキルシェアを推進するマッチングプラットフォームで、手軽に講師登録が可能だ。オンライン学習では、こうした受講生→講師登録が浸透しており、「学ぶ」から「教える」へのシフトが容易になっている。つまり、学んだ価値の転換が手軽になっており、学ぶモチベーションの高揚にもつながっている。
その他にも副業解禁や人材流動化の加速などもあり、社会人の学び直しは単なるスキルアップの域を超え、令和時代をスマートに生き抜く上でも有用なプロセスとなりつつある。人生100年時代にため息をつくビジネスパーソンも少なくないかもしれないが、考えようによっては、人生をより楽しむ機会が増えるということでもある。学んだことをさまざまなカタチでアウトプットし、自身をアップデートする――。そうした複数におよぶ学びサイクルが今後は当たり前の世の中になっていきそうだ。