
離職対策に有効な“ハイジ”とは
離職理由の約8割を占めたハイジーンファクターとは
社員が定着しづらい…。人材難の時代、離職率の高い企業は大きなリスクを背負うことになる。欠員が出ることで生産性が下がる。定着しづらいから採ってもすぐに辞められる。ヒトの不足でさらに現場が疲弊し退職者が増える。負の連鎖に歯止めがかからず、最悪、倒産もありうる――。
企業は当然、対策を考えている。だが、労働環境を整えても離職ドミノは止まらず、人事は頭を抱える。そうした中、離職にフォーカスすると、興味深い要因が浮かび上がってくる。厚労省の調査で離職理由の約8割を占めたその理由は「ハイジーンファクター」と呼ばれるものだ。
ハイジーンファクターとは衛生要因といわれ、不快を回避する欲求だ。一定の水準に満たないと不満をおぼえるが、一定の水準を超えても大きな満足を与えない。不満足要因ともいわれるが、実は同じ調査でモチベーターと呼ばれる満足要因は、理由の2割にも満たない。
そこで、このハイジーンファクターに着目し、離職対策サービス「ハイジ」をローンチしたのがOKANだ。同社は、プチ社食サービス「オフィスおかん」を2014年から累計で1500社以上に導入するなど、職場環境の向上を側面支援してきた。ハイジはその延長線上にある、川上からの職場改善支援サービスとなる。
「人口減少などの社会的背景から離職による損失の影響は大きくなっている。社食サービスで多くの企業と接点を持つ中で、ソリューションに留まらず、我々として企業の課題にさらに踏み込む必要性を感じた。日本ではまだそれほど注目されていないハイジーンスコアに特化することで、企業の人材定着の支援を出来ればと考えている」とOKANの沢木恵太CEOは説明する。
不満足要因をケアすることで定着を促す施策につなげる
ハイジーンスコアの算出は、独自に設定された48項目の質問によるアンケートから結果を分析。数値としてアウトプットする。スコアが高いほど衛生要因が高く、離職リスクが高まる。スコアは、チームワーク、精度の充実、休暇の取りやすさ、フィジカルヘルス、メンタルヘルスなど項目に分かれ、それぞれのスコアも表示される。アンケートは月1回を目安に実施される。

衛生要因が可視化されることで離職傾向をつかみやすくなる
人事担当者や上司は、こうした可視化された個々のハイジーンスコアをもとに各種ケアをすることなどで、社員の定着を促進する施策などにつなげることができる。企業ではこうしたアンケートをストレスチェックなどで導入している事例も多いが、同社は「ハイジーンスコアに特化し、結果を定量的に捉え、見える化している点で、一般的な調査とは異なる」と同サービスの優位性を説明。今後は独自の対策施策の開発や他社連携も含め、総合的なHRテック企業としての土台を固めていく。
人口減少とそれに伴う労働人口の減少は、人手不足倒産を誘発するだけでなく、企業格差を助長する方向に作用することは避けられない。少なくとも人をひきつけられない企業に明るい未来はないことは確かだ。その前に、所属の社員が職場に魅力を感じ、そのポテンシャルを最大限に発揮できるようにする。そうしたことも最大限にケアすることが、企業が令和時代を生き抜く上で必須となっていきそうだ。