働き方

テクノロジーの活用で人手不足を解消する勘所

投稿日:2019年7月24日 / by

生産性向上と働き方改革の両立を追求するロイヤルホールディングスの事例

人口減少を背景にした人手不足が深刻だ。なかでもハードワークで敬遠されがちなのが、接客業。人だからこそのサービスの代表格でもあり、機械化は簡単でないが、最先端のテクノロジーを活用し、上手く省人化を実現している企業もある。

菊地会長

リクルートジョブズ開催のHRイベントに登壇したロイヤルホールディングス会長の菊地氏(都内で)

ロイヤルホールディングスの事例は、そのひとつとして大いに参考になる。リクルートジョブズが先ごろ都内で開催した「HR Intelligence Forum Showcase Conference」に基調講演で登壇した同社会長の菊地唯夫氏が、その取り組みについて説明した。

同社が人手不足対策で目指すのは「生産性向上と働き方改革の両立」。そのために、機械化・ロボット化を視野に入れた次世代店舗を出店。そこをラボ的な拠点とし、店舗運営における効率性の向上を追求する。

その店舗が、東京・中央区に出店した「GATHERING TABLE PANTRY(ギャザリングテーブルパントリー)馬喰町店」。同店の最大の特徴は、キャッシュレス店舗であることだ。タブレットによるセルフオーダーに始まり、支払いまでをセルフで完結できる。

キャッシュレス化という側面だけでは、それほどの省人効果を感じないかもしれない。だが、実は、閉店後のレジ締めやレジ担当交代時の現金チェックは従業員にとって大きなプレッシャー。キャッシュレス化は、それを解消するためその効果は想像以上にある。

実際、ロイヤルグループの他店舗と同店の比較では、店長の管理・事務業務が19%に対し、5.6%と大幅に圧縮されている。ここで浮いた時間は、接客や調理、会議や研修など店舗運営の質向上にあてがわれ、見事に同じ時間内で質を上げることに成功している。

生産性

「パントリーでは人が行うことで価値を生み出す作業には人が集中。直接的に価値を生み出さない部分は極力圧縮している。こうした成果を横展開させ、イノベーションを連鎖せることが重要になる」と菊地氏は説明する。

同店ではさらに、調理器具も最新マシンを導入。細かいプログラミングにより、ベテランコックとそん色のない火加減などが可能で、短時間で高品質な調理を実現する。ここぞというポイントには惜しみなくテクノロジーを活用。それによって、最大限の効果を得るーー。無人店舗も出始めている中で、同店ではそこを徹底追求している。

店舗機械化が人手不足にフィットする理由

まさに次世代の飲食店そのものといえそうだが、店舗ロボット/機械化が人手不足対策にフィットするもうひとつの理由がある。それは、業務が徹底して効率化されることで、誰でも対応できるようになることだ。特に、今後流入が期待される外国人労働者をスタッフとして迎える場合、こうした店舗では業務を最小化でき、特別な教育を施さずしても戦力化がしやすくなる。

同社ではさらに先を見据え、AI活用に向けた実験も並行して行っている。まだ途上だが、AI導入により、従業員のスケジュール管理に始まり、在庫データなどの分析による収支予測、および自動発注、さらには物流管理による廃棄ロス削減など、経営効率の極限までの向上も期待される。

店頭の人手不足をテクノロジーで解消する。それが重要なポイントには違いないが、突き詰めるべきは、人がやることで付加価値を生み出される領域はどこか。そこを追求することといえる。極限までその境い目に近づく先には、店舗はもちろん、客にとっても最大級の喜びがもたらされる次世代型の店舗運営の理想のカタチがあるハズだ。

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