自分の「売り」を発信する力、持っていますか
<変人・安田の境目コラム>
発信力が無かったら路頭に迷っていた、という反省
個人で発信する重要性。私はこれを倒産後に痛感しました。もしこのスキルがなければ、私も、私の家族も、路頭に迷っていたことでしょう。
もともと私は書くことが好きでした。講演もやっていたし、発信することも苦手ではなかった。それでも一定数のフォロワーを獲得するのに、三年という年月がかかりました。
今から考えれば現役の時に、もっと真剣にやっておくべきでした。私個人の商品開発、そして私個人のフォロワー獲得。それは奪われない資産だから。
会社がなくなり、自己破産し、ひとりになった私に残されたもの。それは過去の実績しかありませんでした。ワイキューブという会社を大きくした実績。ベストセラーを書いた実績。当初はこの実績に対して、仕事をくれる人もいました。でもこんな仕事は続きません。当時45歳だった私が、残りの人生を食っていけるわけがない。
ひとつの会社を、そこそこ大きくしたのだから。他の会社でだって出来るだろう。経営者の能力で食っていけるだろう。私はそうタカをくくっていました。でも現実はそんなに甘くない。ひとつの会社を大きくしたスキルは、ひとつの会社でしか通用しません。その時代、その組織、その商品が、あってこそのスキルなのです。
今の会社でしか通用しない人間になってはいけない
もう一度スキルを磨き直さなくてはならない。新たなスキルに合わせて、もう一度マーケットをつくらなくてはならない。その事実を思い知らされました。
世の中には、ひとつの会社でしか通用しない社員がたくさんいます。同様に、ひとつの会社でしか通用しない経営者もたくさんいるのです。いや社長こそ、その最たるものなのです。
自分の発想力は今の時代に通用するのか。自分の言葉は社員以外の人にも響くのか。自分の経営は他社でも通用するのか。私はもっと早くそれを、世に問うてみるべきでした。
社長はもっと外に出るべきです。知り合いという枠を超えて、世の中に発信するべきです。本当の実力を知っておくべきなのです。
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。