
ミスやエラーに価値があることも、ある。それが人間
<変人・安田の境目コラム>
「価値がある」ということは、「誰かに欲しがられる」ということ
みなさんはご存知ですか。ミスプリントの紙幣、あるいはエラーコインというものの存在を。たとえば福沢諭吉の顔が歪んでいる1万円札とか。たとえば穴の位置がズレている50円玉だとか。早い話が失敗作です。製造過程でのミス。それがとんでもない高値で取引されるわけです。
1万円札なのに100万円もしたり。50円玉なのに5万円もしたり。不思議ですよねえ。というか人間ってバカですよねえ。こんなものを欲しがるのは、人間ぐらいなものでしょう。いや、そもそも、お金などというものを欲しがるのも人間だけ。
でもそれでいいんです。それが正しいのです。価値があるとはそういうことだから。
価値があるとは、人間にとって価値があるということ。つまり、人間が欲しがっているもの=価値があるもの、ということなのです。恐竜の糞の化石とか。歪んだ顔の絵画とか。誰かが履き古した靴とか。穴だらけのズボンとか。
人間は変なものを欲しがる。そして私たちは人間相手に商売している。
このふたつを決して忘れないこと。それがとても重要だってことです。
かく言う私も、アンティークのグラスが大好きです。たとえば100年前のバカラのグラス。新品で買えば1万円なのに、中古品が5万円もするのです。新品は傷ひとつありませんが、中古品には擦り傷があったりします。新品は歪みひとつありませんが、中古品は歪んでいたりします。でもそれがいいんです。
誰かに欲しがられるモノを提供する。それはビジネスの基本でもある
今は機械で作るので、すべてのグラスは寸分違わぬ形です。これじゃあつまらない。100年前の手作りバカラは、ひとつひとつ職人の手作りです。全く同じように作ろうとしているのに、微妙に違う。つまりミスが出る。
これが実に味わい深いんですよ。
<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。
