
社長は「正社員」というものを勘違いしてはいけない
<変人・安田の境目コラム>
正社員は、会社に忠誠を尽くして、会社と共に在ってくれるものではない
正社員は同じ船に乗ったクルーのようなものです。船が沈めば一緒に沈んでしまう。言うなれば一蓮托生。だから当然ロイヤリティは高い。
この考えに基本的には賛成です。自分が乗っている船なのだから、沈んでしまうことは避けたいでしょう。だけど一緒に沈むわけではありません。沈むのは社長ただひとりです。
社長は船が沈むまで、他の船に乗り換えることはできません。沈んだ後も海底まで縛られているのです。それは単なる責任感の問題ではなく、連帯保証という法律による拘束。逃げたくても逃げられないのです。
社員は逃げられるのだから無責任だ。などと私は思いません。それは単なる役割分担だからです。社長は逃げられないけど、その代わりに権限もやりがいもあります。
私がいちばん問題にしているのは、社員に対する社長の感情です。自ら成長しようとしない、とか。せっかく育てたのに辞めてしまう、とか。社員なのに無責任だ、とか。間違っているのは社員ではありません。その思い込みが間違っているのです。
「社員が、社長の思うように育たない」のは、むしろ当たり前と考えるべき
社員には船を降りる権利があります。一方的に船を降ろされない権利もあります。言われた業務はしっかりこなすけど、それができるように会社が育てるべき。これは間違った主張なのでしょうか。
私はそうは思いません。どんなに重要なポジションの社員にも、辞める権利はあります。会社には社員を教育する義務があります。雇い続ける義務もあります。雇用とはそういうものなのです。
特にスキルに関して、社長さんは誤解しがちだと思います。自らスキルアップして然るべき。もっと深く会社や事業を理解するべき。そう思いたい気持ちは分かります。だけどそういう仕組みにはなっていない。それが現実なのです。
そろそろ認めましょう。社員が求めているのはいい職場です。安定した収入とハードすぎない仕事。そして適度な休暇。社員に求め過ぎるのは酷というものです。言ったことをしっかりやってくれるだけで十分。だって出来ないものは出来ないんですから。
