働き方

社長は「正社員」というものを勘違いしてはいけない

投稿日:2021年12月20日 / by

<変人・安田の境目コラム>

正社員は、会社に忠誠を尽くして、会社と共に在ってくれるものではない

正社員は同じ船に乗ったクルーのようなものです。船が沈めば一緒に沈んでしまう。言うなれば一蓮托生。だから当然ロイヤリティは高い。

この考えに基本的には賛成です。自分が乗っている船なのだから、沈んでしまうことは避けたいでしょう。だけど一緒に沈むわけではありません。沈むのは社長ただひとりです。

社長は正社員の在り方を正しく心得なければ
社長は船が沈むまで、他の船に乗り換えることはできません。沈んだ後も海底まで縛られているのです。それは単なる責任感の問題ではなく、連帯保証という法律による拘束。逃げたくても逃げられないのです。

社員は逃げられるのだから無責任だ。などと私は思いません。それは単なる役割分担だからです。社長は逃げられないけど、その代わりに権限もやりがいもあります。

私がいちばん問題にしているのは、社員に対する社長の感情です。自ら成長しようとしない、とか。せっかく育てたのに辞めてしまう、とか。社員なのに無責任だ、とか。間違っているのは社員ではありません。その思い込みが間違っているのです。

「社員が、社長の思うように育たない」のは、むしろ当たり前と考えるべき

社員には船を降りる権利があります。一方的に船を降ろされない権利もあります。言われた業務はしっかりこなすけど、それができるように会社が育てるべき。これは間違った主張なのでしょうか。

私はそうは思いません。どんなに重要なポジションの社員にも、辞める権利はあります。会社には社員を教育する義務があります。雇い続ける義務もあります。雇用とはそういうものなのです。

特にスキルに関して、社長さんは誤解しがちだと思います。自らスキルアップして然るべき。もっと深く会社や事業を理解するべき。そう思いたい気持ちは分かります。だけどそういう仕組みにはなっていない。それが現実なのです。

そろそろ認めましょう。社員が求めているのはいい職場です。安定した収入とハードすぎない仕事。そして適度な休暇。社員に求め過ぎるのは酷というものです。言ったことをしっかりやってくれるだけで十分。だって出来ないものは出来ないんですから。


<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
yasuda21965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。

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