
自分を自分の外側から眺めてみる「メタ認知」の視点
<変人・安田の境目コラム>
昔の人が「修行」をして「悟り」を開いていた理由、それは…
肉体的な私と精神的な私。このふたつを分離する努力。それを修行と言うのでしょう。修行によって分離が進み、いずれ悟りという領域に至る。これを解脱というのでしょう。
つまり解脱とは、精神的な私が、肉体的な私を飛び出した状態。だから火だって熱くないのです。心頭滅却すれば火もまた涼しなのです。無茶苦茶な話ですが、昔の人の気持ちを理解することはできます。
この世の苦しみ。理不尽な差別や不運。死への恐怖。それを乗り越えるために、昔の人は考えたのでしょう。そして行き着いたのです。悟りという領域に。
自分は自分であって、自分ではない。だから理不尽でも、不運でも、いつか死ぬとしても、嘆かなくてもいいんだよ、と。昔はきっと、生きていくだけで大変だったのでしょう。だから生きていくために、悟りが必要だったのです。
今は時代が違うけど、胸中がモヤモヤした時に役立つのが「メタ認知」
だけど現代は事情が違います。昔みたいに死が身近ではない。だから誰も修行なんてしない。それなのにみんな不満だらけ。相変わらず、生まれ持った運・不運はあるし、貧富の差は広がっているし、決して楽には生きていけない。今こそ悟りが必要なのです。
火もまた涼しなどという、非現実的な修行を伴わない、もっと現実的な悟り。私は私であって私ではない。精神的な私と肉体的な私の分離。その現代版。それがメタ認知なのです。
苦しい修行は必要ありません。座禅も滝行も山登りも要らない。やるべきことはひとつ。それは自分を他人として扱うこと。
雑に扱えという意味ではありません。他人だからこそ丁寧に扱ってあげるのです。
<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。
