
会社のビジョンに、うかつにSDGsとか掲げちゃダメよ
<変人・安田の境目コラム>
企業理念とかミッションとかに、「社会貢献」やら「SDGs」やら、やたら出しがちだけど
私だってSDGsは嫌いではありません。世界の平和は願っているし、持続可能な社会も実現したい。心からそう思っています。
だけど企業がこれを掲げるのは反対です。とくに中小企業がビジョンやミッションにSDGsや社会貢献を掲げること。厳密に言うならばSDGsを掲げることがダメなのではなく、掲げるべきことを掲げていないこと。これがダメだと言っているのです。
そもそも中小企業のビジョンやミッションは何のためにあるのか。誰のためにあるのか。まずここを考えなくてはいけません。
企業とは“ある生業”によって顧客に価値を提供する組織です。顧客と従業員どちらが偉いわけでもない。価値と金銭との等価交換。交換することによるお互いの満足。これが企業の存在意義です。
となると、掲げるべきビジョンやミッションは明白です。私たちが提供するのはこういう商品です。この部分の価値だけは必ず実現します。その対価としてこれだけの報酬をいただきます。この価値と価格に納得いただける方がお客様です。
これを掲げずして、いったい何を掲げるのでしょう。
何を生業にしていて、どんな価値を提供するかを約束するのが本来でしょ
たとえば“こだわりのバターと小麦粉”で作る、クロワッサン専門店があったとしましょう。本当に美味しい。だけどちょっと高い。
掲げるべきはバターと小麦粉についての約束。必ずこれを使います。こういう製法で作ります。手間がかかります。原価がかかります。ちょっと高くなってしまいます。これ以外にあるのでしょうか。
もちろんSDGsも掲げればいい。だけど一番はそこではない。私たちの価値はここだ、ということ。そのために〇〇にこだわっている、ということ。だから価格は決して安くはない、ということ。
まったく同じものが違う価格だったら。いちばん安いものを選ぶに決まっています。同じじゃないのなら何が違うのか。それは誰にとってのどういう価値なのか。ここが明確でないと顧客は選べません。
誰にどういう理由で選んで欲しいのか。選ばれるために約束する価値は何か。社内でこれを共有するのがビジョン。社外に向けて約束するのがミッション。必要なのは顧客と社員に向けた言葉なのです。
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。