
自分はいくら位まで稼ぐか「上限」を決める働き方
<変人・安田の境目コラム>
私、安田は、会社経営で失敗して破産した時に、大事なことを学びました
会社が潰れた時、私にはまったくお金がなくなってしまいました。正確に言うと0円ではなく99万円。それが私に残された全財産です。0円では1週間も生きていけないので、破産者にも99万円は残してくれるわけです。しかし99万円なんてあっという間になくなります。私は生活を立て直す必要がありました。
それまでの私は贅沢ばかりしていました。乗る必要のないタクシーに乗り、食べる必要のない贅沢品を食べ、必要のない酒を飲み、必要以上に大きな部屋を借りていました。99万円でこんな生活はできません。当然のことながら節約を開始しました。そして節約する中で気づいてきたのです。いかに不要なものにお金を使っていたのか。
タクシーに乗らなくても電車やバスで十分。贅沢品はたまに食べた方が美味しい。お酒はほどほどが健康にいいし楽しい。要らないものをどんどん捨てれば、適度な大きさの部屋で快適に暮らせる。
リベンジしましょう!もう一度会社をやりましょう!と、いろんな人に言われましたが、私はそんなふうには思わなくなりました。お金を稼ぐモチベーションが、どんどん下がっていってしまったのです。
もちろん貧乏は嫌です。たまには贅沢品も食べたい。疲れた時や、急いでいる時には、タクシーにも乗りたい。でもこれくらいなら、必要な稼ぎはたかが知れています。そこで私は自分の稼ぎの上限を決めることにしました。上限は2000万円。破産者にはちょっと贅沢な金額ですが、私にしてみたら堅実な目標でした。
自分が決めた上限以上は、仕事はしない。「ひたすら上をめざす」なんて、しない
2000万円から逆算して自分の時給を決める。時給から逆算して自分の商品を作る。こうやって今の仕事スタイルが生まれたのです。数年で目標は達成しましたが上限はずっと同じです。仕事の依頼が来てもこれ以上は受けません。
2000万円が正しいのかどうか。それはよくわかりません。ただひとつ確実に言えるのは、上限を決めておいて良かったということ。決めたおかげで迷いがなくなりました。
稼ぎが同じなら拡大しても意味がない。
稼ぎが同じなら人を雇うのはやめよう。
稼ぎが同じならもっと好きなことをやろう。
こうやって自分の生き方が決まったのです。
年に2回ほど家族で旅行し、たまに酒を飲み、美味しいものを食べ、狭くなった家でゆったり過ごす。考えてみたらこれほど贅沢な人生はないのです。
※安田氏がこの考え方をさらに広げて、ただ「売上げを伸ばせ」「上を目指せ」「拡大しろ」だけの会社はやがて淘汰されていく、ではどういった戦略をとれば会社は生き残っていけるのか、というビジネス論をわかりやすく示してくれている別コラムを、こちらで読むことができます。どうぞ、併せてご覧ください。
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。