
お金の感覚の移り変わりについていかなくちゃ、ね
<変人・安田の境目コラム>
世の中が「軽々しいキャッシュレス」になっていくことに戸惑っていた安田です
現金がクレジットカードになって、交通系の電子マネーになって、PayPayのような軽い存在になっていく。これは由々しき事態なのでしょうか。それとも喜ぶべきことなのでしょうか。
初めてPayPayを使った時、私はあまりの軽さに愕然としました。あの「ペイペイ♪」という独特の響き。え!こんなに軽くていいの?と思わずスマホを覗き込んでしまいました。
楽しませるための演出なのか。たくさん使わせる策略なのか。あるいはお金を軽くする陰謀なのか。意図があるかないかは分かりませんが、PayPayはもはやお金ではないと感じます。
自分の銀行口座に入っている日本円。ここにある残高は確かにお金です。数字を見ているだけでお札が思い浮かぶ。ああこんなに貯まったんだと嬉しくなったり。ああこんなに少ないよと不安になったり。
銀行口座からPayPayにお金を移すのは、かなり勇気が必要でした。本当に大丈夫なのか?自分は騙されているんじゃないのか?これは大掛かりな詐欺ではないのか?などと躊躇いながらお金を移動しました。
確かに銀行口座からお金が減っている。そして同額がPayPayにチャージされている。当たり前と言えば当たり前です。ですが私はすごく不安になりました。これは本当にお金なのか?と。もうお金ではなくなったのではないか。これを確かめるために、私はPayPay銀行に口座を作り、キャッシュカードを作り、セブン銀行でPayPayを引き出しました。
出てきたのは日本円の紙幣。当たり前です。当たり前のはずなのに、すごく不思議な気分になりました。そして安心しました。3万円以上は手数料無料。現金が欲しければいつでも下ろせる。
こうやって私はPayPayに心を許すようになったのです。
「お金の感覚」が移り変わっている。それについていかなければ、ならないのですね
私はかなり頭の硬い人間なのでしょう。今でも現金を持たずに外出するのは不安です。だけどちょっとずつ変わりつつあります。近所ならスマホだけで出かけるし、ちょっとした買い物ならスマホとクレジットカードだけで出かけます。
若い人には笑われそうですが、私にはリハビリが必要だったのです。
今でも現金がないとダメ、現金が使えない店はダメだと、縛られている高齢者はたくさんいます。この呪縛は想像より遥かに強固なのです。
※移り変わるお金の感覚を、次世代を担う子供たちにはどう教えるべきか、という課題についての安田氏の見解をこちらの別コラムで読むことができます。「教えるべきはお金を稼ぐ苦労ではない」という目からウロコが落ちるような見解です。どうぞ、併せてご覧ください。
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。