
仕事を獲ってくるより、いい社員を採る方が大変なのです
<変人・安田の境目コラム>
ビジネスモデルは出来ているから、あとは動かす人がいればOK、と考える経営者の愚かさ
あと足りないのは人だけ。採用さえ上手くいけば、この事業は成功したようなものだ。新卒採用をお手伝いしていた頃、よく社長に言われたセリフです。
ビジネスモデルはもう出来ている。あとは君たちが人を連れてくるだけだと。当時から私はこれがすごく疑問でした。あと足りないのは人だけ。それってビジネスモデルが出来ていると言えるのでしょうか。
もちろん当時の私にはそんなことは言えませんでした。足りない人材を集めてくることがまさに私の仕事だったからです。
社長はとにかく儲かるビジネスを考える。事業に必要な資金を集めてくる。そして必要な人材を募集する。人事担当者を雇い、採用サポート会社に発注し、必要な人材を手配させる。君たちは採用のプロだろう。そう言われると“ぐうの音”も出ませんでした。
今は採用の仕事をやめたので平気で物申すことができます。求める人材が勝手に集まってくる。その仕組みも含めてのビジネスモデルですよ。人がいないビジネスモデルなど絵に描いた餅ですよと。
中小企業の経営者ほどよく考えるべき。「仕事はあるのに人がいない」だけは言っちゃダメ
当時も今もこの主張は正しいと思っています。そして時代も変わりました。
今や多くの経営者が実感しています。仕事を取ってくるよりいい社員を定着させる方がずっと大変だと。人事担当者を怒鳴っても、高い業者に発注しても、採れないものは採れないのです。
人事担当者の仕事はこれから大きく変わっていくでしょう。採れないものを採るのではなく、無理せず、お金をかけず、採用できる仕組みを作る。これが仕事になっていくのです。
中小企業の経営者は心して考えるべきです。働きたい人が勝手に集まる会社を目指すのか。それとも省人化・無人化に移行していくのか。「仕事はあるのに人がいない」これだけは絶対に言ってはいけない。それは無能な経営者が言うセリフなのです。
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。