
中小企業の経営に迫る危機と、生き残るための解決策
<変人・安田の境目コラム>
「小さいながらも頑張っていく」では生き残れる時代ではなくなっている、という事実
大企業と中小企業。この境目がよりクッキリしていく。私たちはそういう時代を生きています。
これまでは単なる規模の差でした。従業員数とか、売り上げとか。ミニチュア大企業でも経営は成り立ってきたのです。むしろ大企業に倣って経営してきた会社も多いはず。でも残念ながらその時代は終わり。もうミニチュア大企業は生き残っていけないのです。
最大の要因は人口減少です。マーケットの縮小も大きいですが、労働人口の減少は更に大きい。雇ってやっているなどという価値観は、もう完全に消え失せました。経営と労働は今や対等な関係です。倫理的な意味ではなく現実的に対等なのです。働いた時間に対してきちんと報酬を支払う。報酬分の仕事をしっかりとこなす。ある意味ドライな、ある意味とても真っ当な労使関係なのです。
報酬以上に働いてくれないと会社には利益が残らない。これは会社側の主張です。だけど労働側の主張は違います。残った利益からより多くの給料を払わないなら転職させてもらう。
安く人を雇って利益を上げる経営はもうできません。やる気のある真面目な人材は報酬の高い会社にどんどん移動するからです。こうなるとミニチュア大企業は生きる術を失います。
生き残るためには給料の支払い競争に勝つ他ない。その方法はふたつしかありません。どんどん規模を大きくしてスケールメリットを追求するか、規模を大きくせずに独自の価値を生み出すか。
圧倒的なシェアを取らなければすぐ真似される。真似されないビジネスは、どう作れるか
真面目でやる気のある人なら利益が出る。このモデルにはマニュアル化が必須です。その分真似されやすい。価格が下がりやすい。だからこそ圧倒的なシェアで勝つ他ないのです。
独自の価値を生み出すには、マニュアル化の逆をいくしかありません。つまり人に依存しまくったビジネスモデルです。この人が生み出す価値。それは「この人」がいなくなったら終わりなのです。
独自の価値を生み出す人材をいかにして繋ぎ止めるか。これが中小企業の最大の課題となります。雇用にこだわらない柔軟な発想が課題解決の糸口となるのです。
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。