働き方

地方転職を失敗しないために自問すべき5つの設問

投稿日:2015年10月22日 / by

プロフェッショナル人材と地方企業をつなぐ転職イベント

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プロフェッショナル人材を前に金沢自慢する山野市長

地方転職への動きが活発化しつつある。さきごろ、都内で北陸を地盤にする企業への転職に興味を持つ人材を対象としたイベントが行われた。主催は、管理職・グローバル人材に特化した会員制転職サイト「ビズリーチ」を運営する(株)ビズリーチとトーマツベンチャーサポート(株)。単なるUIターンではなく、管理職クラスのプロフェッショナル人材がその対象という点でも注目される。

地方企業の利用が前年同期比約3.46倍。首都圏在住のビズリーチ会員の地方転職が前年同期比で1.5倍。政府の号令もあってか、この数字が示すように、地方を活性化する動きや地方に対する首都圏からの視線は確実に強まっている。人材は、地方から首都圏へが主流だったが、いよいよその潮流が変わり、首都圏一極の構図も崩れつつある。

イベントの先陣を切り、登壇した金沢市長の山野義之氏は、冗談半分に「自慢します」と宣言した上で、金沢の魅力を存分にアピールした。学習環境、生活環境、文化・伝統面、金沢新幹線開通による利便性の向上…。都心では考えられないような住みやすさ、暮らしやすさを、集まった約100人のプロフェッショナル人材へ向け、饒舌に語り尽くした。

地方転職でネックとなるものとは

地方転職グラフイベントは、あくまで地方への転職のきっかけとする場。地元企業の魅力等についても話してよさそうだったが、実は、地方移住のカギを握るのは、まさにこの暮らしやすさにある。だからこそ、山野市長は限られた時間の中で、あえて地元自慢に多くの時間を割いたのだ。

その裏付けとなるのが、ビズリーチの調査。それによると、同サイト登録のプロフェッショナル人材の69%が地方転職を「やりがいがあれば前向きに検討する」と回答している。一方、地方転職を検討しない人の懸念材料のトップは、2位以下を大きく引き離し「家族の賛成が得られないのではないか」となっている。つまり、プロフェッショナル人材の地方転職へのネックは、「家族」にあるというワケだ。

同社取締役のキャリアカンパニーカンパニー長の多田洋祐氏は、こうした状況について次のように説明する。「弊社アンケートで地方転職へのネックとして家族を挙げる人多くなっています。それをクリアするにはやはり、転職先が住みやすい環境であることが重要になって来ると考えています」。報酬面はともかく、生活面で現状より劣るとなると、家庭持ちにとっては、さすがに地方転職は難しいということだ。

バラ色とは限らない地方転職

地方転職の実状を明かす多田氏

地方転職の実状を明かす多田氏

一方で、肝心のやりがいや仕事内容ももちろん、重要な要素だ。その点ついて多田氏は「すでに地方転職を実現している人にたくさんお会いしていますが、その中には、首都圏以上に高齢化が進む地方はこれから首都圏で起こることを先に体験できる。一足先に日本に迫る課題を解決することをミッションに地方転職を決断した人もいます」と明かす。地元企業へ受動的にやりがいを求めるのでなく、自ら積極的に課題を見出し、それを解決するという命題を持って、先駆者は地方転職に臨んでいるのだ。

もちろん、受け入れる企業側も単にプロフェッショナル人材を望んでいるワケではない。そうした人材でないとできないことがあるが故だ。金沢を代表する金箔メーカーの浅野達也社長は「我々はモノづくり企業として、伝統を生かした製品づくりには絶対の自信を持っています。しかし、私どもにはどうしても都会的ビジネスセンスがない。より市場を拡大し、世界へ進出するためには首都圏でもまれたプロフェッショナル人材が必要なんです」と力を込める。裏を返せば、首都圏で埋もれているプロフェッショナル人材にとって、その能力を最大限に発揮できるだけのリソースが、地方には転がっているということになる。

地方転職希望者の思惑は

個別説明説明で熱心にアピール地方企業

個別説明説明で熱心にアピール地方企業

イベントに参加したある男性は、「以前から北陸に興味があり参加した。首都圏ではすでにポストがあぶれている。とはいえ、スキルには自信があるので、必要とされる場があれば前向きに検討したい」と人材が飽和気味の首都圏から地方へ活躍の場を求める思惑を率直に明かした。別の男性は、「地方転職への興味はあるが、だからこそ、もっとビジネスベースで多面的に企業が情報を提供してくれれば、より有機的にお役に立つことができる」と提言しつつ、前のめりに話した。

政府による「地方創生」の号令に引きずられるように、加速モードに入った地方転職への動き。だからこそまだ上滑り感もあるが、人口減少やテクノロジーの進化により、働く場を首都圏にこだわる必要はなくなりつつある。それだけに、検討するビジネスパーソンは、安易に潮流に乗るのではなく、<本当に自分のスキルを活かせるのか>、<地元になじめるのか>、<生活水準は物価とのバランスで保てるのか>、<家族の賛同は得られるのか>、<主体的に目標を設定できるのか>。少なくともこの5つの問いに自問自答し、納得した上で実行することが、地方転職に失敗しないための最低条件といえそうだ。

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