
企業間の壁がなくなる時代に起こること【瓦の目】
共創からボーダレスへ
次世代の働き方のキーワードして、「ボーダレス」がハッキリと浮き上がってきた。企業間の共創からさらに進み、境界なく、人材が行き来する社会。すでに始まっている人材の流動化と合せ、オフィスの構成から企業と人材の契約スタイルまで、これまでそびえていた「壁」は取り払われ、オープンで柔軟なものへと進化を遂げつつある。
いまや、アウトソーシングは当然であり、大企業とベンチャー、さらには個人との共創さえ珍しくない時代だ。世界のワークプレイスをデザインするゲンスラー社は、次世代における理想的なワークプレイスの要素として、集中とコラボレーションのバランスが取れた空間であるとしている。つまり、作業を集中できる空間である一方、他企業とコラボもできるデザインというワケだ。
2015年10月下旬にオフィスを統合し、ユーザーやビジネスパートナー向けの施設を社内に設置したIBMは、まさにそうした流れに沿っている。そこでは、これまでのコンサルタントや業界・業種ごとのスペシャリストに加え、研究員、エンジニアなど多様な知識を持った専門家とワンストップで討議できるなど、柔軟で臨機応変な開発が可能になるという。
IoTがもたらしたものづくりの構造変革
従来の企業間の壁を取り払う動きが加速する大きな要因は、IoTにある。業界・業種の超えて、製品に付加価値を与えることになるIoT分野では、単一企業のノウハウやテクノロジーだけでは、どうにもならない。多様な知見を柔軟に組み合わせ、最適な形で落とし込む技量が求められる。そのためには、常に同じ空間でいることが最も効率がいい。そうなると、正社員という契約自体も足手まといになりかねない。
要するに、すでにネット上で実現しているボーダレスなつながりが、いよいよ現実社会へも降りてきているのだ。そうなれば、企業があり、そこに社員が所属するというこれまでの形態は、なくなることはないにしても、確実に緩くなり、やがては企業間をボーダレスに渡り歩ける形へとシフトしていくのは必然と言っていいだろう。人材流動化をも超えるボーダレス社会。リアルでもボーダレスが常識になれば、何か問題があるのか…。直接的にはないが、能力のあるものとないもの格差が拡大することは避けられないかもしれない。もっとも、共創が当たり前になっても競争がなくなることはない。