働き方

次世代の働き方のカギを握る「CWO」とは

投稿日:2015年5月18日 / by

健康を経営に結び付けるスタイル

社員の健康が企業にとって重要であることは言うまでもない。分かり易い取り組みとして、健康診断の実施がある。だが、健康診断は、受けた後の責任は基本、各個人にある。“危険信号”が出ている結果でも再受診もせず、素知らぬ顔で業務に励んでいる社員が珍しくないのは、そうしたことも原因の一つといえる。

「自己責任」といってしまえばそれまでだ。だが、例えば社員が不健康が原因で、遅刻・欠勤を繰り返す。あるいは、体調不良で生産性が下がる。最悪、体調不良で離職に追い込まれるーー。こうしたことが発生するリスクを考えると、簡単に自己責任では済まされない。問題は、こうしたことは目に見えづらく、責任の所在を明確にしづらいことだ。

ウェルネス経営のカギ握るCWOとは

ウェルネス経営は、こうした社員の健康を福利厚生の一環と捉えるこれまでのスタイルとは一線を画し、経営と密接に連動したものとして、より深く踏み込んだ経営スタイル。その実践のカギを握るのが、CWO、チーフウェルネスオフィサー(最高健康責任者)だ。COOやCHOなどと並ぶ、経営と密接に連動した新たなポジションで、社員の健康の全責任を担う。

まだ聞きなれないポジションだが、実際、なにをするのか。具体的には社員の健康チェックを行い、その改善策を実施し、行動を定着させるなどの施策の指揮を執る。それにより、社員の離職防止や生産性の向上などを図る。2015年5月18日、このCWO制度を導入し、ウェルネス経営を推進する企業4社が都内に一堂に集結した。そこでの各責任者の発言から、その方向性や可能性をみてみよう。

ウェルネス経営

左から吉田雄人横須賀市長、河村社長、溝口CEO、小笹会長、川鍋社長

日本交通(株)川鍋一朗社長は「以前から社員の健康への取り組みを行ってはいたが、なかなか効力がなかった。今回、こうした形でウェルネス経営を宣言することは、対外的にはもちろん、社員へのメッセージとしての側面でも大きな効果が期待できる」と話す。(株)吉野家の河村泰貴社長は「これから我々は“安い”“早い”“うまい”に、さらに『健康』をキーワードに加えていく。そのためには当然ながら従業員自身も健康でなければいけない」と重い覚悟とともにウェルネス経営に乗り出す狙いを明かした。

社員のモチベーション向上をサービスとして提供するリンク&モチベーションの小笹芳央会長は「モチベーションは心と体の健康によって高まる。まずは自社で実践してから、をモットーにする我々は、社員の健康を経営の視点から捉え、その増進に戦略的に取り組み、世のロールモデル企業を目指す」とウェルネス経営導入への強い意気込みを語った。

みえずらい健康をどう指標化するのか

各社とも、社員の健康の重要性を十分に認識するゆえのウェルネス経営&CWO 導入であることは明確だ。だが、健康が業績にどう連動するのかは目に見えずらい。そうなると、実践や継続のモチベーションをキープしづらくなる。こうした課題をクリアし、その取り組みをサポートする役割を担うのが、(株)FiNCだ。同社は、かねてから「ウェルネス経営」を経営理念に掲げ、ICTやスマホを活用し、企業や個人に健康サポートを実施。組織に対しても、健康状態に基づいた新たな人事評価や採用手法を導入するなど、福利厚生とは一線を画す抜本解決を進めてきた。

「企業にとって最大の資源である“人財”に対し、経営陣が積極的に健康投資を行い、個人のやる気を引き出し、組織を活性化することで企業を成長させていくスタイルがウェルネス経営。これまでは、こうした部分は主に人事部門が担っていたが、その領域が拡大し、担いきれなくなってきている。そもそも、社員の健康に対し、しっかりと責任をもつポジションがなければこうしたスタイルは真に機能はしない。だから、賛同の企業には、その実践にあたり、弊社のサービスを活用する上で、絶対条件とは言わないが、CWOを導入することを望んでいる」とFiNC代表取締役CEOの溝口勇児氏は明かした。

社員の健康という、業績との連動を図るのが困難な指標の可視化しつつ、経営責任者としてCWOを創設することで、しっかりと経営とコミット。財務や人事と同等の観点で「健康」を重要指標と捉え、戦略に連動させ、業績の向上を図る。まさに、人を「人財」を考える経営スタイルがウェルネス経営の真髄だ。CWOは、その成功のガキを握る重要なポジションとなる。成長時代の終焉とともにターニングポイントを迎えた売上げ至上主義。それに代わる新たな価値感のひとつとして「健康」に着目した次なる経営スタイルの本命が、大きく動き出した。

 

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