働き方

運に任せる就活が実は合理的な理由

投稿日:2015年3月10日 / by

クジと占いで志望企業を決める前代未聞の就活イベント

一見、楽しさ満点の焼き肉就活ですが

一見、楽しさ満点の焼き肉就活だが…

『ベツルート』

(株)アドヴァンテージ

働き方の多様化に比例するように、就活シーンの多様化も加速している。背景には、より優秀な人材を確保したい企業とできるだけミスマッチのない就職をしたいという学生側の利害関係の一致がある。そうした中で、志望企業を「運」で決める前代未聞のイベントが都内で開催された。現場に潜入し、その思惑や意義を徹底追跡した。

現場で実態を追跡

会場は都内の焼き肉店。ほぼ貸切で行われた会場は、40人近い学生の歓談と香ばしい焼肉の煙りで充満する。アルコールも入り、時間がたつほどにテーブルは白熱。パッと見には合コンのようだが、れっきとした就活イベントだ。各テーブルには、企業の社長もしくは人事担当者が1人以上混ざり、学生と意見交換している――。

本当に志望企業を占いで決めていいのか…

この日の命運を決めるカプセルをテルにする学生

この日の命運を握るカプセルを手に胸を高まらせる学生

こうした、場のユニークさで注目をひく就活イベントは、合コン採用やフットサル就活、マージャン採用などもあり、いまではそれほど珍しくはない。だが、この“焼き肉就活”の最大のポイントは、企業と学生のマッチングの仕方にある。

実は学生は、場内に用意されたガチャガチャを回し、その結果で同席する企業が決まる。つまり、「運」で志望企業を決めてしまうのだ。クジを引く前に「やりたくないこと」だけは選ぶことができるが、ほぼ完全に運任せだ。

計画的偶発性理論というのがあります。これは、個人のキャリアの8割は予想外の偶発的な事象に決定されるというものです。人材ベンチャーである我々には企業、特に中小から、とにかく学生と出会う場づくりをして欲しいとの要望があります。会えさえすれば、なんとかできるというワケです。学生に対しても未知の面白い社長さんを知ってもらう機会を提供したい。そこで、焼き肉と占いとくじを組み合わせた就活の場としてこのイベントを開催したわけです」と主催で人材ベンチャーのアドヴァンテージ・中野尚範代表は、その狙いを明かす。

計画的偶発性が導く“いい出会い”

クジに加え、占い師も用意され、場内の命運は紙のみぞ知る展開に…

クジに加え、占いも用意され、場内の命運は俄然、神のみぞ知る展開に…

まさに企業との出会いを、クジという偶然により計画的に設定し、そこからいいマッチングを生みだそうというワケだ。「運で志望企業決める」。その部分だけを見れば、あまりにもばかげている。だが、どんなに学生が研究し、結果、志望企業に入社しても、離職率が3割で横ばいな現実に目を向ければ、逆説的だが、“クジ就活”もある意味合理的に思えてしまうから不思議だ。

「実際どうでしょうか。例えば親友との出会いって振りかえれば、たまたま席が隣だったからとか、学籍番号が近かったとか。あるいは仕事でも、やりたい仕事はあったけど、ひょんなことから出会った全然違う職業が今は天職となっているなんてケースがほとんどですよね。ところが就活だけはなぜか、決まりきったルートに乗って、面接では企業も学生も狐の化かし合いみたいなことをやっている。それで本当にいい出会いにつながるハズがありません」と中野代表は力を込める。

同イベントには、同社の社外取締役にも名を連ねるの慶大特任教授の若新雄純氏もプロデューサーとして関わる。「ゆるさ」をキーワードに、これまでに「NEET株式会社」や「ゆるい就職」など枠からはみ出した人材を最大化する取り組みを続ける同氏は「就職ナビサイトって、すごく合理的で見栄えもいい。でも、まともにみえるものって実はいい加減だったりする。だったら、偶然と運で企業を選ぶ場があってもいいんじゃないかと思うんです」と同イベントに込めた意図を明かす。

気になる「運任せ」の成果は…

さて、学生側も企業側も十分に互いを知ることなく、焼き肉とアルコールでフランクに語り合った3時間。結果、何が生まれたのか…。開始前「焼き肉目当てです」と打算的だったある学生は「世の中にはいろんな仕事あること分かって本当に勉強になった。このイベントがなければ知ることはなかったかもしれません。とてもいいですね」と評価を一変。企業からは、4社から計6人の学生に「ラブコール」が送られる上々の結末となった。

東大生を筆頭に有名大からも多数参加したイベントでは企業からの「求愛」も大量発生

東大生を筆頭に有名大からも多数参加したイベントでは企業からの「求愛」も大量発生!やはり運が縁を呼んだのか…

「前回は3人に内定が出て、その内1人は入社まで行きました。その人は人生初の内定というおまけつきです。きょうはきっかけの場ですが、ラブコールをもらった学生もこれから企業と緩くつながって、いい形に発展すればいいですね。とにかく、いかに運と偶然が大事かということがこのイベントで証明されたんじゃないでしょうか」と若新氏は、満足げな表情でイベントを締めくくった。

「運も実力の内」という。確かに、このイベントの情報をキャッチし、実際に足を運んでいる時点で、参加した学生は十分な“実力者”といえる。今後、ネット上で、本サービスとして展開されることになる“クジ就活”。その名は『ベツルート』。リクナビやマイナビなどのいわゆるメガ求人サイトとは「別のルート」という意味合いだ。サイト上では、この日のリアルイベント同様の「やりたいくないこと選び」、「ガチャガチャ」も機能として設定される予定というから大いに期待できる。

「運は自分でつかむもの」。そうもいう。同サービスが、新機軸の採用サイトとして順調に発展すれば、「運は自分でつかむもの」を実現する、個々の求職者にとってよりよい就職への新しいルートができることにつながるだけに、その成り行きは大いに注目される。サイトオープンは3月末の予定。

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