働き方

クラウドソーシングによる人材育成

投稿日:2013年11月15日 / by

higa8

クラウドソーシングによる人材育成の活用法

コスト削減や優秀な人材への容易なリーチなどが魅力としてクローズアップされがちだが、クラウドソーシングには、別の有効活用の仕方もある。人材育成だ。

あまりピンと来ないかもしれないが、利用イメージはこうだ。

まず、企業が従業員をクラウドソーシングに登録させる。そして、その適性に合った業務を受注する。そうやって、経験を積み、上級のクラウドワーカーへと育っていくとともに、その間に得た経験値は所属企業での業務にも還元される。つまり、企業に所属しながら、“実践修行”を行い、腕を磨くわけだ。

人材育成としてのクラウドソーシング活用。これについて比嘉教授は「従来型の採用では69%が失敗しているという調査もある。その主な理由は評価。クラウドソーシングにより、外で“修行”を積むことは、実践で腕を磨けることに加え、発注者から評価を受ける喜びを得られるとともに所属企業のありがたみも感じられ、大きな効果が期待できる」とし、その高い効果を評価する。

法律確かに従来型の採用は、基本、筆記と面接のみで行われ、本当に企業が必要とする適正までを見極めるのは、非常に難しい。インターンシップにしても十分に適性を判断できるとは言い難い。しかし、一旦企業に入り、その上で、業務上必要となるスキルでクラウドソーシングに登録し、業務を受けるとなれば、“プロ”の仕事が要求され、これ以上ない、実地訓練となる。おまけに報酬は本人の副収入となれば、腕はもちろん、どんどん自信も高まっていく。

クラウドソーシングによる地域活性

地域活性化にも大きな効果期待できる。いうまでもないが、時間と場所に縛られないクラウドソーシングは、仕事の集中する都心部の仕事を地域に分散させるのにうってつけのシステムだ。それはつまり、地域に埋もれる優秀な人材の発掘にもつながる。あるいは、地方出身で都心で働くワーカーが、地元を拠点として働くために活用するというパターンもあるだろう。

例えばランサーズの場合、デザイナーやエンジニアなど70のカテゴリがある。多様なカテゴリに分かれた中から自分が得意な分野、興味のある分野に登録し、腕を磨く。副業であれ、フリーランサーであれ、お金をしっかり稼げるよう鍛錬する場としてクラウドソーシングのプラットフォームを活用すれば、思わぬ可能性が拡がるかもしれない。都会でしかチャレンジできなかったような機会が、クラウドソーシング上には、いくらでもある。実際、ランサーズやクラウドワークスにおいて、受注者の過半数は地方在住者となっている。

会社に所属しながら、仕事によってキャリアを磨くのがこれまでのキャリアアップの王道だったとすると、クラウドソーシングによって、よりフリーの立場で同様の腕磨きが可能になった。

優秀な人材が、企業の経営の失態などにより、漂流しつつある日本。クラウドソーシングは、そんな日本に追い打ちをかける脅威であると同時に、底力をアップさせる可能性を秘めた画期的なシステムでもあることを忘れてはいけない。

第一回 クラウドソーシング革命がもたらす破壊的創造
第二回 アメリカの事例からクラウドソーシングを学ぶ
第三回 クラウドソーシングがもたらす労働市場への影響
第四回 労使双方にメリットをもたらすクラウドソーシング
第五回 クラウドソーシングに秘められた可能性
第六回 確実に世界中に浸透するクラウドソーシング
第七回 日本型クラウドソーシングとは
第八回 クラウドソーシングによる人材育成
第九回 クラウドソーシング時代に待ち受ける現実
第十回 クラウドソーシング時代に取り残されないために…


イノベーションマネジメント研究科 比嘉教授東京工業大学 比嘉邦彦教授 プロフィール
米国アリゾナ大学から1988年に経営情報システム専攻でPh.D.を修得。以来、同大学講師、ジョージア工科大学助教授、香港科学技術大学助教授を経て1996年に東京工業大学経営工学専攻助教授に、1999年より同大学理財工学研究センター教授。テレワークおよびクラウドソーシングをメインテーマとして、組織改革、地域活性化、e-コマースなどについて研究。それらの分野における論文を国内外の学術誌や国際会議などで多数執筆・発表。企業へのテレワーク導入ガイドブックの編集委員長、テレワーク推進フォーラム副会長を含めテレワーク関係省庁の各種委員会の委員および委員長を歴任。

最新著書紹介→『クラウドソーシングの衝撃 雇用流動化時代の働き方・雇い方革命

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