働き方

会社は誰のものか? に「解」はあるのか…

投稿日:2015年6月1日 / by

株主中心の資本主義からの脱却

若手経営者を前に公益資本主義について熱く語った原氏

若手経営者を前に公益資本主義について熱く語った原氏

『公益資本主義』アントレプレナー・イニシアティブの決起集会が2015年6月1日、都内で開催された。20〜40代を中心とした若手経営者約500人が集結し、公益資本主義を提唱する原丈人氏らの話に耳を傾けた。

株主に振り回される資本主義から脱却せよ――。原氏の提唱する「公益資本主義」のエッセンスはそこに尽きる。マネーがマネーを支配する資本主義でなく、社会全体の構成員(社中)に利益を分配する資本主義。マネーゲームと化す株式市場を根本から変える仕組みを日本発でつくろう、というのが原氏の訴えだ。

「米国の株主資本主義では、従業員の給与を削減しても経営者には多額のボーナスが入る。利益のために資本をうまく活用したという評価となるからです。これでは経営者は株主の下僕です。そうでなく、これからはROC。リターン・オン・カンパニー(社中)が基準にならなければなりません。企業が社会のために有益な事業をするためには基準を変える必要がある」と原氏は力を込める。

言うは易しだが、世界を股にかけ、これまで数々のアクションで実業界にインパクトを与えている原氏。理論を語るだけでなく、今秋をめどにROCを指標にするための準備も着々と整えている。究極的には、新たな資本主義の基軸、社会貢献度を重視するような新市場創設構想までも視野に入れる。

見据えるのは次の世代が安心して暮らしていける社会づくりだ。そのためにこの日を、次世代を担う若手経営者の決起集会と位置付ける。公益資本主義に沿った経営を目指す注目の経営者4人も登壇し、それぞれの公益資本主義への見解も語った。

日本発の“新資本主義”で世界を変える

4人の若手経営者と意見を交わした原氏(檀下左)

4人の若手経営者と意見を交わした原氏(檀下左)

面白法人カヤック代表取締役CEO柳澤大輔氏は「ウチはサイコロ給という給与決定制度をつくったけど、アレは評価をしないというメッセージ。他人の評価を気にするとクリエイティブなものはできないから。昨年上場しましたが、株主といい形でやって、面白くなくならないよう工夫していきたい」と公益資本主義と絡めながら、改めて利益に振り回されないカヤック流の経営方針を語った。

クックパッド創業者で取締役の佐野陽光氏は「世の中も薄々は分かってると思うけど、もう以前の仕組みでは立ち行かなくなってきている。仕組みの方もアップデートしていかないといけない」と公益資本主義の可能性と重ねながら、現在の日本がターニングポイントにあることを指摘した。

サイボウズ代表取締役社長青野慶久氏は「上場時は、IR活動を頑張ってやってましたが、株価が乱高下する中で、儲けた人に『儲けさせてくれてありがとう』といわれ、オレは何のためにこんなことをやってるんだと思い、以来、売り上げを追求することを止めました」とまさに公益資本主義につながる出来事に直面した過去を明かした。

C Channel代表取締役社長森川亮氏は「もともといろんなことは“自然”に進んできた。ところがいまは、コンピューターが入ったことで、バランスが崩れている。それが株式市場に反映されていると思う。そうした状況をまた自然に近づけるためにも、これからメディアをつくるものとして試行錯誤していきたい」とLINEの次の野望をぶち上げた。

会社は誰のためのものか? 株主を中心とした資本主義からの脱却を考えると自ずと突き当たる命題だ。おぼろげながら答えは浮かんでも、理想論のようでもある。だからこそ、その解答となる公益資本主義の浸透には明確な指標が、そして多くの賛同者が必要となる。これまで50代以上の経営者層ではじわじわと浸透してきた公益資本主義拡大の動き。そこに若手経営者が加わり、実践者として成果を出し、広がっていけば大きなうねりも期待できる。

活動をけん引するアントレプレナー・イニシアティブ事務局では今後、10月に正式稼働し、日米で記念セミナーを開催。全国に支部を創設することも視野に、まずは1泊2日の合宿なども計画。公益資本主義の考え方の周知と実践ノウハウを指南する。そして、日本での実績や成果を蓄積し、社会をハッピーにする新たな資本主義として、世界へ向け発信していく土台を構築していく。

 

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