
新しい会社のカタチ
お毒 毎年に夏にスタッフの表彰を行ってるんだけど、今年はみんな頑張ってくれたんで、選考が難しいわ。
猫田先生 そんなに真剣に選考してんのか。賞金も商品もないんだろ。それに確かスタッフは3人だろ。
お毒 「名誉」があるのよ。受賞したら1年間、それを誇りにまた頑張れるってものなのよ。迷うにきまってるじゃないの。
猫田先生 だったらもう少し、賞のネーミングを考えろよ。「タマスジピロリンコ賞」なんてのを受賞してホントに誇りに思うのかね…。ただ、社内表彰制度ってのは、悪いもんじゃないよな。通常業務をこなすだけでなくプラスαのモチベーションが湧いて来るよな。
お毒 でしょ。でもネーミングは変更を検討するわ。「カマタマスッキリンコ賞」なんてどうかしら。
猫田先生 ……。社内評価制度については、パナソニックが画期的な試みを始めたんだ。「Wonder賞」というんだが、もはや社内表彰制度の域を超えてるな。というのも、評価の過程に一般社員約5300人に社外有識者6人、そして一般消費者100人が加わっているんだ。もはやその辺の立派なアワードと変わらないスケール感だよな。
お毒 それはすごいわね。ウチも選考委員に常連客を加えようかしら。
猫田先生 まずはネーミングだろっ。で、この賞創設のパナソニックの狙いとしては、〈社会やお客様の生活に驚きや期待を感じていただける革新的な商品・サービスを生み出し、「A Better Life, A Better World」の実現に向けて、新しい価値創造の提案に取り組んでいく〉、ということなんだ。だから、一般消費者が選考に加わったんだな。こうした大企業が、ベンチャーのような斬新で刺激的な取り組みをする背景には、変革を生む組織への体質改善という側面があるだろうな。ただ、実はこれは劇薬でもある。もともと優秀な社員がこうした取り組みによって、“覚醒”すれば、その先には起業って選択肢がちらついて来るからな。
お毒 確かにウチも客がたくさんつくようになったら独立するコが後を絶たないわね。もうあきらめてるけど…。
猫田先生 いまは、家電でも一人メーカーがいるように、優れた技術力があれば、製品開発はできるし、ITをうまく活用することで販路も切り拓ける。大企業に属していなくても、やりたいことができる環境は整いつつあるからな。
お毒 組織にいるより、一人でやる方が自由にノビノビできるしね。でも、小さい所帯でも資金繰りだけは大変なのよ。ウチなんて自転車どころか三輪車営業。漕ぐのをやめたら撃チンよ。
猫田先生 その辺も今はクラウドファンディングが日本でもかなりいい感じになりつつある。優れたアイディアなら、かなりの確率で予算が集まるんじゃねぇかな。クラウドファンディングは、支援者が集まるってことがマーケティングにもつながるから一石二鳥だしな。大企業で予算もらってやるのは確かに楽だが、思い通りにできない部分も出て来るし、売れなかった場合に気まずいからな。だったら、完全自己責任の方がスッキリしていいじゃねぇか。
お毒 アタシ、実は辞められてもそんなに心配はしてないの。だって、その後もつながってるから、いざという時はヘルプしてもらったりするからさ。
伝衛門 ずっとつながってるでやんすよ、お毒ネぇさん。
お毒 調子いいわねぇ、お前。金の工面はお断りよっ。
猫田先生 お毒のいうように、これからの企業は、プラットフォームとなることが理想的だ。つまり、小さな起業家たちが、力を発揮する場として、進化するんだ。社員を自社で抱え込むことは確かに業績の安定につながるかもしれんが、一方では、どうしても自由が制限され、革新性が育まれずらい。だったら、個性を最大限に発揮している人たちと緩やかにつながる形で、プラットフォームとなるのが、最も効果的にパフォーマンスを発揮することにつながる。プロジェクト単位で、人材が集い、終われば解散。そうしたサイクルで動いていけば、どんどん革新的な製品が生み出されるんじゃねぇかな。だから、これからの企業は、カネ・企画力・設備の3つに注力していくことが、スマートだと思うぜ。