働き方

次世代の給与のカタチとは

投稿日:2015年9月24日 / by

『新しい働き方の教科書』<Lesson7>

給与自動支払い方式の功罪

もはや賃上げだけがテーマでは無意味となりつつある春闘

正社員という契約が生み出した副産物として、給与自動支払い方式をあげてもいいだろう。会社員の口座には、金額が毎月決まった金額が振り込まれる。大活躍しようがヘマをしようが基本、支払い額は変わらない。会社によっては、社長賞が出たり、ボーナス査定に影響することはあるだろう。定期的なベアもある。だが、頑張り具合と正当に比例しないため、モチベーションアップにはつながりづらいのが実状だ。

会社側にすれば、細かい査定は現実的に難しく、ならば、ベースは揃え、あとは賞与などで差をつければ、公平性が保たれる、という理屈なのかもしれない。社員側にしても、活躍が永続的なものか、一時的なものかは自分ではどうしようもない部分もあり、大きな変動なく、徐々に上がり、一時金として支払われる方式の方が長い目で見ればメリットがあり、安心感もある。こうした利害関係の一致もあり、各人に大きな差がつかない現在の自動支払い方式は、長らく続いている。しかし、その結果、正社員は知らぬ間に会社の歯車として、「無難に滞りなく」に細心の注意を払う、本来のパフォーマンスを出しきらない人材へと堕落していく…。

頑張れば、昇進という見返りがある。確かにそれはそうだ。昇進すれば手当も付き、報酬もアップする。だが、責任の重さに見合うかと値踏みすると、昨今の厳しい情勢では、多くの人間にとって、「見合わないもの」というもまた事実だ。こうしたことを突き詰めていくと、最終的には会社に依存していることが、いつまでも自分の評価、つまり報酬に納得できない原因であることに気付くハズだ。

成果報酬型というのもある。だが、このスタイルも突き詰めれば、「独立した方がいい」となりがちだ。結局、個人が本当に納得のいく報酬を得るためには、2つの道しかないと考えられる。一つは「他に代えられない才を持つこと」。もう一つは「独立すること」。前者は言うまでもないが、後者は納得はできても十分に報酬を得られるかの保証はないことがミソだ。

仕事の細分化と「時間より成果」へのシフトで変わる分配の基準

さらにいえば、前者においても、他に代えられないならフリーでやる方が稼げる、ということになる。ここまで考えた上で、正社員の自動給与払いの仕組みをどう捉えるか…。能力のある人材にとっては、どうにも納得しづらい仕組みであり、何のとりえもない凡人や、いわれてことをやるのが性に合っている、真性Mの受け身型人間にとっては、ある意味で最強の報酬のカタチとも言えそうである。

もっとも、パレートの法則では2割の上位が8割の下位を支えるといわれる。だとすれば、稼げる2割が相応に報酬をもらうのは当然であり、以下の人間が、大した活躍をせずともそれなりに安定的に報酬をもらうのも必要悪とはいわないにしても、会社を滞りなく回す仕組みとしてはあり、といえるのかもしれない。

自動的に給与を支払うシステムは、様々な意味で利便性が高いことから、今後も残ることは確かだろう。ただし、新しい働き方へシフトする過程や定着後には、社員の業務がより細かく分類され、その内容に比例し、給与がきめ細かく分配されることになるだろう。申し少し具体的には、ある程度のベース給の上に、レベニューシェアのような形で給与に差がつくスタイルだ。評価ではなく、役割による差別化。不平の起こりづらい報酬体系が、仕事の細分化や外部人材との連携増大、「時間より成果」へのパラダイムシフトなどにより、標準化されることになるだろう。
◇ポイント 新しい働き方の給与システムはより“公平”な分配へ向かう
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