働き方

着実に変質する正社員のこれから…

投稿日:2015年9月15日 / by

『新しい働き方の教科書』<Lesson5>

風前の灯の正社員のこれから

まずはメタボ体質から脱却が正社員の次への一歩になる

まずはメタボ体質から脱却が正社員の次への一歩になる

正社員信仰はいまだ根強い。契約によって、終身雇用が保障されることがなによりのメリットと考えられているからだろう。社会人にとって、安定して収入が得られるということは、何よりの精神安定剤となる。いつ無職になるかと不安を抱えながら日々を過ごすのは、寿命を縮めるようなものだ。だから、定年まで面倒を見てくれる「正社員」という契約は、ある意味で社会人のゴールのようなものといえるのかもしれない。

しかし、である。環境が激変したいま、この正社員という契約が、企業にとって極めて厄介な存在になりつつある。最大のネックは、簡単にクビを切れないことだ。浮き沈みのある景気の中で、どうしても解雇せざる得ないバイオリズムも当然やってくる。その時、正社員のクビを簡単にきることはできない。代わりに切られるのが契約社員や派遣のいわゆる非正規社員だ。

得てしてぬるま湯につかっている人材も多い正社員に比べ、日々必死な非正規の方が優秀な場合も多いだけになんとも不合理だ。もっとも、そうした“優遇”の代償として、企業は正社員にマルチに仕事を課す。本来の業務以外に雑務や接待、残業、休日出勤…安定を保証してもらう見返りだから、正社員の側も、多少の理不尽でも甘んじて受ける。こうして、正社員は、純粋な能力以外の部分も提供することで、“待遇”との帳尻を合わせる。

ポスト正社員の理想のカタチはなんなのか…

言うまでもないが、この関係は、終身雇用が前提だ。企業が終身雇用を保証できないとなれば、正社員にとっては、契約は重荷でしかない。求められることは多いが、見返りが少ない。なにより、業績不振という不確定要素ながらも、首のあたりがスース―する状態で働き続けるのは、一転して、精神をすり減らす毎日となる。「こんなことなら定時に帰れる非正規の方がマシだ」。そんな声が聞こえてきそうだ。

要するに、成長が右肩上がりのモデルだから実現できた終身雇用制度は、成熟へ向かう今後の社会には、不適合なのだ。考えてみれば、右肩上がりだったとしても、終身雇用など保証できるものではない。そういう心意気である、という会社の意思表示としては心強いが、あくまで心意気に過ぎない。従って、そもそも、正社員という契約自体が幻想だったのか、とさえ思えてくる。

現に、正社員には明確な定義はない。だからこそ、これからはしっかりと契約書に明記できるような労働とその対価という関係による、雇用契約が求められるだろう。それが「正社員」という言葉とフィットするものなのか、あるいは正社員という言葉が死語になることを意味するのか。それは分からない…。
◇ポイント 正社員という形態は今後、大幅に“スリム化”する
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