働き方

「職場版レンタル移籍」を支援するサービスが誕生

投稿日:2015年9月29日 / by

社員をレンタル移籍させる人材プラットフォーム

「日本の労働力の潜在部分を掘り起こせれば」と語る原田代表

「日本の労働力の潜在部分を掘り起こせれば」と語る原田代表

正社員のまま、他企業で活躍する--。副業でも休日返上の複業でもなく、そうした活動を実現できれば、働く人はもちろん、企業にとっても恩恵がないだろうか…。サッカーでよく知られるレンタル移籍のような仕組みを導入し、企業間の人材流動化をサポートするサービスがこのほど、誕生した。

提供するのは(株)ローンディール(http://loandeal.jp/)。英語で「期限付き移籍」の意の社名の同社が、日本の労働市場流動化に風穴を空けるべく、立ち上げた。サービス名も社名と同じ。内容は、企業間のレンタル移籍を支援するプラットフォームだ。

「私自身が転職をした際、転職先に入ってみて分かったことがたくさんありました。とても貴重な経験であるとと同時に、会社に所属したまま、こうした体験ができる仕組みがあっていいのではないかと考え、このサービスを立ち上げました。このサービスで、企業に対しては、新しい人材育成・、活用の手法を、働く個人に対しては、より豊富な成長機会を提供したいと思っています」と同社代表の原田未来氏は説明する。

日本では、正社員として入社した企業で、外部の空気を吸いながら学べる機会は少ない。大企業には出向という仕組みがあるが、あくまで派遣先は関連会社。それでも貴重な成長機会に違いないが、目まぐるしく市場環境が変化する昨今、ドメスティックな動きだけではもはや対応できない状況でもある。その意味で、全く関連のない会社への期限付き移籍は、修行という意味でも大きな成長が期待できる。

「想定しているのは、ずっと同じ会社で働き続けたい20代後半から30代の人材。企業にとって、ありがたい存在である反面、そうした社員の成長は鈍化する可能性があります。そこで、他社へ“出向”することで、外部の空気を吸い、刺激を受け、さらに自身のスキルを磨き上げ、それをまた自社に還元するという仕組みがあれば、企業にとっても社員にとっても、そして受け入れる企業にとってもメリットがあるはずです。この仕組みによって、埋もれている人材の潜在能力を引き出すことにもつながると考えています」と原田氏は、サービスが秘める可能性を明かす。

サッカーのレンタル移籍は、能力がありながら、戦術的な問題で出場機会が少ない選手が活躍の場を求め、必要とするチームへ期限付きで移籍する仕組み。このサービスでは、さらなる成長を望む、もしくは期待される人材が、他社のプロジェクトにその適性を踏まえ、ジョイン。一定期間活躍することで、スキルを磨く。まさに、職場版レンタル移籍というワケだ。

労働市場最適化につながる新しい人材移動のカタチ

似たようなサービスとして、リクルートキャリアの「サンカク」があるが、決定的に違うのは、同サービスがあくまで就業時間外の活動であり、会議への参加が基本なのに対し、ローンディールでは正社員としての立場で公式に認められて、他社プロジェクトへジョインする点だ。つまり、出向社員への給与は、所属企業が支払う。大きく拡がれば、日本の労働市場全体の最適化にもつながる可能性を秘めたサービスなのだ。

「こうした形ですと、企業は、どうしても流出リスクを懸念すると思いますが、現実的にはすでに離職率の上昇は大きな問題になりつつあります。その意味では、このサービスで“出向”というカタチで他社を経験することはある意味で抑止力になるとも思っています。さらにいえば、自社にないスキルやノウハウを身に着けて帰ってくるメリットもあります」(原田氏)。

loandeal同サービスは当面、大企業からベンチャー企業へのレンタル移籍を主軸に展開。人材が慢性的に不足気味のベンチャーへ大手のハイスペックながら、十分に活躍の場のない人材をあてがうなどで、実績を積み上げる。将来的には、IT企業と非IT企業、地方企業と東京の企業など、労働力の歪みを最適化する様々な組み合わせを提供していく。費用は基本、人材を受け入れる側が払い、月額10万円。

正社員神話が崩壊する一方で、定年の無期延期を強いられかねない社会情勢の中、会社員は、不安なく生きるために「自立」が強く求められる時代となっている。正社員のまま、他社で修行を積む同サービスは、そうした素養を強化するだけでなく、仕事を「自分事」と捉えるいい機会にもなる。企業にとっても、先行き不透明な情勢の中で、変革を進めやすい土壌つくりへつながるだけに、拒絶する理由はないだろう。働き方が新しい方向へ向かう中、それを補完する大きな枠組みとしてのサービスが生まれたのは、ある意味、必然といえ、今後の成り行きが大いに注目される。

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