
しあわせになれる『はたらきかた』を実現する方法【瓦版書評】
なぜ会社員はネガティブになりがちなのか

しあわせになれる『はたらきかた』(武田双雲:ぴあ)
「仕事に行きたくない」、「仕事が楽しくない」、「会社辞めたい」…。多くの会社員が心のどこかでそんな風に思っているのではないだろうか。会社では楽しそうにバリバリと仕事をしているように見える人でさえも。なぜそうなるのか。会社には基本、就業規則や上司やノルマや売り上げなど、「しなければならない」ことが、充満しているからだ。
自分が心からしたいと思うことが、就業規則で出来なかったり、素晴らしい新規の企画書が上司に見もされずゴミ箱にに捨てられたり、ようやく達成したノルマを翌月からさらにアップされたり…。こんなことばかりだと、たとえ前向きな人間でもさすがに「しなければならない」という思考へとシフトせざるを得なくなる。
会社は、あくまで存続ベースで考えれば、売り上げをキープし続け、社員が暴走しないようコントロールすることが、大きな役割といえる。その意味では、監獄のような厳しさなどみじんも求めていない。そこをうまく認識し、むしろ最大限に会社の資産を活用しているのが、バリバリと働く社員といえる。逆に、縛りにがんじがらめになり、思考停止状態で、作業員に成り下がっているのが、「仕事が楽しくない」とぼやく人々だ。
同書には「成功」と「成幸」という言葉が出てくる。前者がバリバリ働き、地位と名声にするいわゆる成功者。後者は、毎日が楽しくて仕方がない、いわば人生の成功者だ。どちらがいいというわけではないが、成熟へと向かうこれからの時代は、価値感として後者が主流になっていく、というのが著者の展望だ。
どうすればしあわせになれる『はたらき』かたができるのか
では、どうすれば冒頭のような多数派であろうネガティブ会社員が、「成幸者になれる働き方」ができるのか。著者の指摘はいたってシンプルだ。「ポジティブで生活を楽しむ」。それだけだ。辛いことは楽しいことへの勉強と考え、毎朝の歯磨きから楽しみながら行う…。そうやってささいなことに対しても常に前向きでいることで心が安定し、仕事にも気持ちよく取り組め、結果的にいい仕事ができる、というワケだ。

ポジティブ&エンジョイが「しあわせになれるはたらきかた」と話す武田氏
「そんなの当り前だ」。そう思う人も多いかもしれない。だが、どうだろう。常に笑顔で対応する人には思わず話しかけたくなるし、楽しそうにしている人には近づきたくなる。逆にいつもしかめっ面で、批判的で不機嫌そうな人へは、頼みごとがあっても遠慮しがちになるだろう。ルーティンワークさえも楽しもうとすることで、やっぱり楽しくなってくる。「幸せ」には、どうやら、なろうと思えばなれるありがたい性質がある反面、そう思わなければどんどん遠のく習性があるようなのだ。
著者は、いまでは著名な書道家だが、大企業勤めの経験もある。そこでは、“しなければならない空間”に息苦しさを感じながら、あえてポジティブ&エンジョイを実践。毎日を楽しく過ごした。そして、3年勤めた後、書道家へ転身。まさに「天職」へとたどり着いた。会社員時代、常に前向きで、いわゆる“会社の掟”のようなものにも変に縛られなかっったからこそ、短期に、そして的確にそうした決断ができたのだろう。
同書では、これからの人材に求められる資質として次のことを挙げている。「自分がその組織で貢献できることは何かを考えて行動できる人」。言われたことをやるのではなく、自分の武器と、できることを認識し、活躍のフィールドを分かっている人、ということだ。そう考えれば、そのフィールドはなにもいまの職場とは限らない。これまでの会社の「当たり前」をいい意味で破壊するメッセージが、同書には詰まっている。テーマとは裏腹にサラッと読め、これからの働き方と天職を考えるには、最適の一冊といえる。