企業風土

【瓦版書評】君の働き方に未来はあるか?(大内伸哉:光文社)

投稿日:2014年2月24日 / by

君の働き方に未来はあるか?

本当に正社員は魅力的なのか…

根強い正社員神話がある。就活生へのアンケートなどでもいまだ就職に「安定」を求める声が過半数を占める。一度就職すれば、定年まで面倒を見てくれるという正社員の“特典”は、先行き不透明な日本経済にあって、際立って魅力的に映るのだろう。ましてや、正社員比率は、年々減少を続けている。門が狭まるほどに焦りも上乗せされ、そのポジションはさらに崇高になっている感すらある。

本当に「正社員」はそれほど魅力的なのか…。大企業による大量リストラという現実が珍しくなくなった昨今でさえ、やはり「正社員=安定」なのだろうか。そうだとすれば、あまりに無防備で楽観的すぎる。そもそも、正社員には特典がある一方で、そうであるための“条件”がある。会社の指揮命令に対する“拒否権”のハク奪である。もちろん、基本的人権は守られるし、労働法というガードもある。そうはいっても、基本、経営者の命令は絶対だ。

不安定時代に安定を勝ち取るための2つのキーワード

本書は、正社員を分解し、そのメリットとデメリットを解説。そこから、ワーカーが、不安なく長い社会人生活を送るために何をすべきかを示している。キーワードは「転職力」と「プロ」。労働法のスペシャリストである著者だけに、労働法がいかにして労働者をまもってくれるのか、といった内容が期待されるが、むしろ逆。そうしたものが機能できない世の中に変わり果てた日本で、社会人として生き残るためにどうすべきなのかを海外事例なども引合いにだし、説く。

労働法も機能しづらいほどに厳しい日本社会にあって、もはや「正社員」としての特権は、風前の灯。そもそも企業はなぜ、正社員に十分すぎるほどの特典を与えるのか…。雇い、育て、戦力化し、そしてキープし、企業力をアップするためだ。ところがいまや、企業にそこまでの体力はない。従って、欲しいのはすぐに利益をもたらす即戦力。そうでない人材は、仮に正社員として雇っても、機をみてリストラしたいのが本音だ。つまり、「真の正社員」としての恩恵を受けられるのは事実上、「プロ」としての優れた社員であり、会社が倒れてもすぐによそへ移れる高いスキルを有する「転職力」のある社員だけなのである。

ブラック企業の問題が頻繁に取り上げられ、解雇ルール緩和の声も上がる。これらの背景には共通して「正社員」の在り方の功罪がある。〈正社員には特典をあたえているのだからトコトン働かせる〉、〈正社員は解雇しづらく企業には重荷だ〉…。はき違えも甚だしいが、正社員としての特権提供が、企業に必要以上の権力を与え、一方で足かせとなっている。詰まる所、労働者が企業にぶら下がる姿勢はもはや、誰の得にもならない過去の遺物となり果てたのである。万人がその恩恵を享受できる正社員神話は、もはや幻想に過ぎない――。本書はそうした現実を痛いほどに明示しているが、不思議なほどに読後、後ろ向きな気分にはなならい。それは、実は分かっているようでよく分かっていなかった「正社員神話」のベールを見事なまでに剥ぎ取ってくれたスッキリ感が大きく寄与しているのかもしれない…。

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