
拡大するクラウドソーシングに潜む課題とは
無知ゆえのトラブルが頻発
「どういうことなんだ!」。クラウドソーシングのコンペで落選したはずの自分のデザインが、落とした会社に無断使用されているーー。ビジネス上でのことなので、常識では考えらない“居直り強盗”といえるが、実際に起こった事例だ。とんでもない悪質企業、と断罪したいところだが、必ずしもそうとはいえない。むしろ、単なる無知で、“違法行為”を働いた可能性が高いから始末が悪い…。
急拡大するクラウドソーシング。ネットの利便性を最大限に生かした、企業と案件を結ぶ巨大マッチングサービスは、働き方を変える勢いで普及し始めている。しかし、その実態は、まだまだ未熟と言わざるを得ない。ネットリテラシーが非常に高い層を除けば、クラウドソーシングをしっかりと理解している人は非常に少ないのが実情だ。
日本のクラウドソーシングのオーソリティ、東京工業大学の比嘉邦彦教授は、こうした状況を次のように解説する。「こういった事例は、クラウドソーシング先進国であり契約社会のアメリカでは起こりづらいといえます。この場合、基本的にはサイト運営会社に法的な責任はないと思いますが、このような悪質なクライアントを放置することは、ひいてはサイト運営会社の信用を貶めることにもなりかねません。従って、積極的に問題解決に関与すべきですし、事実関係を公開すべきです」。
悪質利用者への対策が当面の課題
ネットの力で、不特定多数の叡智を活用するクラウドソーシング。そうした部分に立ち返れば、受発注とも入り口の部分が緩くなるのは宿命ともいえる。だが、だからといって、悪質な利用者がいると分かれば、クラウドソーシングサービス提供事業者も健全な市場拡大を考慮すれば、積極的に問題解決に関与すべきなのは当然だ。
どんなに注意してもネット上での炎上が起こるように、こうした問題はその大小はともかく、日常茶飯事にあるだろう。もちろん、サービス提供事業者はクラウドソーシングを社会にとってより良いインフラとすべく、良くない部分の改善とサービス向上へ向けた不断の努力を惜しまない。実際に着実に深化を遂げている。次回以降、各社の取り組みを紹介しながら、クラウドソーシングのさらなる飛躍へ向けた可能性や展望を検証していく。(第二回へ続く)