働き方

【瓦版 書評】世界の働き方を変えよう (吉田浩一郎著 総合法令出版)

投稿日:2014年1月14日 / by

新しい働き方の象徴、クラウドソーシング

クラウドワークス・吉田氏の著書クラウドソーシングとは、インターネット上から不特定多数を募り、仕事を発注するサービス。不特定多数の個人から仕事を発注する感覚は、従来の企業倫理や働き方では想像できないだろう。付き合いがない、信頼がない…。そんな“顔の見えない外注スキーム”が、いまや市場規模300億円近くが見込まれ、数年内には1000億円を突破するスケールで急拡大している。

なぜこれほどまでに急速に普及しているのか。ネットの利便性をフル活用したその便利さはもちろんだが、それ以上に労働環境の変化が、大きな要因といえる。国内市場においては、少子高齢化により、市場が縮小。追い打ちをかけるようにグローバル資本主義が浸透し、企業は、その存続にあっぷあっぷ。社員を抱えることが大きな負担としてのしかかっている。

結果的に非正規の割合は増え続け、当然、正社員比率は下降線をたどる。5割を切るのは時間の問題ともいわれる。そうした中で、特定の企業に属さないワーカーのプラットフォームとして、クラウドソーシングは、何かと都合がいい。時間と場所にとらわれない、コネがなくとも自分の適性に近い仕事が見つけられる、自分のペースで仕事ができる…。従来のワークスタイルを一変させることから“新しい働き方”の象徴としてクローズアップされることもある。

著者は、日本最大級のクラウドソーシングサイト「クラウドワークス」の創設者。ITを駆使した最先端のビジネスモデルのトップゆえに、これまでのキャリアもそうしたイメージがあるが、むしろアナログ的だ。さらには、こうした“新しい働き方”とは、縁遠いような、社会人人生を歩んできているから興味深い。

なぜクラウドソーシングを事業に選んだのか

演劇にのめり込み、職にすることも考えた学生時代。就職した企業ではトップ営業マンを経験、転職後は新規事業を大成功に導くと、ITベンチャーに役員として入社。上場を果たし、大金を手にする。そして満を持して起業。だが、裏切りにあい失敗…。演劇並みに劇的な半生は、それでもいわゆる儲け至上主義の観点からみれば、紛れもない成功ロードではある。

クラウドソーシングで働くワーカーは、現状では自ら望んでそうしているケースも多いが、リストラ等で企業に所属できず仕方なく、というワーカーも少なからず存在する。少なくとも、儲け至上主義の社会でうまくやっていける人種なら、お金より価値観を重視する傾向が強いとされる“クラウドワーカー”をわざわざ選択する可能性は低いといえる。

結果的にそうだった感が強いものの、儲け至上主義の最前線を歩んできた著者が、なぜクラウドソーシングに目を付けたのか。やはり金の臭いをかぎ取ったからなのか…。もちろん違う。演劇を志願する学生から、就職、転職、上場、起業までを体験した末に「本当にやりたいことがみえた」からである。随分と遠回りしたようだが、だからこそ、その先に「クラウドソーシング」があったというのは、決して偶然ではないだろう。いわゆる従来型ワーカーにとっては、今後を模索するためのクラウドソーシング本として読むと、いい意味で裏切られ、なぜだか希望の光が差し込むのを感じ、同時に決断する勇気が湧いてくるハズである。

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