働き方

∞プチプチ、BUMP OF CHICKENのARアプリはいかにして生まれたか

投稿日:2013年11月26日 / by

Tokyo Work Design Weekの4日目(2013年11月23日=渋谷ヒカリエほか)は、総勢16名が登壇。5テーマのプログラムに加え、ワークショップも行われた。この中から1テーマ「途方もないムダは、途方もないプロジェクトになる」についてレポートする。ホストは、年吉聡太氏(ライフハッカー[日本版])。高橋晋平氏(バンダイ)、川田十夢氏(AR三兄弟)の2名がゲストスピーカーとして登壇した。

マーケット理論を無視した妄想

まずは、高橋氏。(株)バンダイに勤務する氏は、大ヒット玩具“∞(むげん)プチプチ”の企画・開発を担当した。プチプチを潰した経験は多くの人が持つだろうが、それを玩具にしようなどと誰が思いつくだろうか。

“ほじれるんです”にはクリアバージョンも

“ほじれるんです”にはクリアバージョンも

突拍子もないアイディアの作り方について、高橋氏は「“①問題×②何でもいい”で簡単に作れる」と言う。例えば、ガチャガチャの企画を考えるとする。①は、カプセルに何を入れるか。②は、とにかく思いつきでカプセルに何を入れるかを妄想してみる、ということ。氏が最近開発した商品に“ほじれるんです”がある。その名のとおり、好きなだけ鼻をほじくりたいという、不特定多数の欲求を満たすためのおバカグッズだ。

決して市場調査では出てこないこうしたユニークなアイディアについて、高橋氏は「大切なのは質より量」と言い切る。企画においては、いかに早く効率的にといったスマートさよりも“ムダ”こそがヒットを生み出す近道なのだ。「ムダを踏み台にしなければ、いいアイディアは生まれない」とは印象的な言葉だが、氏にとってムダとは、努力の軌跡なのだろう。

ムダなことしかしてこなかった

AR分野で第一人者として知られる川田氏。ARは拡張現実と言われ、例えば紙切れにスマートフォンをかざすと、画面上にアイドルが出現し踊りだす。画面を見つめる間のみ、非現実的な世界に入り込むことができる。

TWDW 川田さんが講演する様子

TWDW 川田さんが講演する様子

川田氏のタームは、これまで開発してきたARを披露する形で行われた。目の前で繰り広げられるのは、信じがたい光景ばかり。

BUMP OF CHICKENというバンドのプロモーション用に開発したARアプリ(BOC-AR)は、空中をプレイリストに変える。ポスターにスマートフォンをかざすと、そこに印刷されているCDジャケットが空中に散らばる。あちこちに飛んでいったジャケットを探し、画面をタップすると曲が流れ出す。

「面白そうだからやってみた」という川田氏。それを原動力に“面白いけどムダなもの”を生み出し続けてきた。「本当、ムダなんですけどね」と言いながらもその結果、国内海外問わず一緒に面白がってくれる人が現れるようになった。氏にとってムダとは、好奇心の産物だ。

ARは着々と、プロモーション手段やテレビの視聴方法を変え始めている。先端技術ゆえに体感しなければその素晴らしさは分かりづらい。そのため川田氏は、積極的に自ら説明し、披露する場を設けている。近い将来、たったひとりの“面白い”が、世界の固定観念を覆す日が来るかもしれない。

ムダは、利益を生み出さない――。そんなイメージが覆された2人の講演だった。高橋氏、川田氏の“ムダ論”に共通していたのは、ムダなことにも全力で取り組もうという意識。世の中は、効率化ばかりを求める風潮にある。そうした中にあっては、真似できそうで、実はとても難しい。しかし、できなくはない。必要なのは、仕事と向き合う覚悟なのだと感じた。

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