インタビュー

涙を流す場をつくる男の活動とは

投稿日:2014年9月4日 / by

寺井氏なぜ涙に着目したのか

涙活プロデューサー

寺井広樹氏

涙活とは「泣くための活動」である。もちろん、造語だ。だが、女性の社会進出もあり、社会は泣くことが許容されづらい空気が充満している。〈泣いても何の得にもならない〉と個々が時代を諦観してしまっているのかもしれない。だからこそ寺井氏は「そろそろ泣く自由を取り戻してもいい」と力説する。涙を流すことには、感情の整理はもちろん、なんとストレス解消やダイエット効果もあるというからなおさらだ。寺井氏インタビュー後編では、その実状に迫るーー。

涙のチカラを実感する出来事

泣くとスッキルする。それは、何となくわかる。悲しくて、悔しくて、愛おしくて…。しかし、振り返ればもう何年も泣いていなかったりする。泣けないのか、泣きたくないのか…。理由は人それぞれだろうが、涙腺のスイッチが、オフの状態でほこりをかぶっている。多くの人の泣く感情が、何かによって抑え込まれてしまっている。

涙活

泣くための活動とあって涙活ではみなしっかり泣きます

寺井 そもそも泣くことに着目したのは、離婚式で涙する方が本当にすっきりとした顔をされているシーンをたびたび目にしたことがきっかけです。離婚式では、特に男性側が、昔を振り返るスライドショーの時に号泣される方が多いんですね。正直、離婚式では涙はあまり想定していませんでした。

頬を伝うのは、一体どんな涙なのか。蜜月だった当時を懐かしむ純粋な涙なのか、ピュアだった妻の心身とも変わり果てた姿に対する無念の涙なのか、甲斐性が足りなかったことへの詫びの涙なのか…。いずれにせよ、涙が、そうした山あり谷ありの過去をきれいに洗い流し、再出発への視界をクリアにする。

寺井 悲しいときやつらいとき、うれしいとき、悔しいとき、懐かしさや慈愛に満たされたときなど、プラスにせよマイナスにせよ、心が強く揺さぶられたとき、人は眼から涙を流します。最近の研究では、こうした「情動の涙」に強烈なストレス解消効果があることが分かってきました。ところが、現代社会では泣きたいのに泣けない人が増えている。だから、そういう人が気持ちよく泣けるようにしたいと思い、「涙活」の提唱を始めました。

本当は泣きたい人がたくさんいる

泣きたいのに泣けない人々のための「泣く場づくり」。それが涙活。とはいえ、泣くなら、誰にも見られたくない。一人で、目鼻をグショグショにして泣くのがいいのではないのか。不特定多数の人と集まり、さぁ泣きましょう、というイベントは成立するものなのだろうか…。

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泣語家の泣ける話も「涙活」の余興のひとつ

寺井 もちろんそういった不安はありました。ですから最初は小さな会場をおさえました。ところが、結果的には、行列ができるほど人が集まりました。やっぱり泣きたい人はたくさんいるんだなと実感しました。同時に感情の発露である、泣くということを活動にしなければいけないんだな、と少し社会の病みたいなものを感じましたね。

泣くだけじゃなかった涙活の効果

涙活イベントは、毎月2、3回行われる。当初は泣ける映画を丸丸一本上映していたが、人によって感性は違う。来場者からの意見もあった。そこで、2回目以降は泣けるショートムービーを7,8本流すスタイルに軌道修正。そうした作業を繰り返す中、寺井の体にある変化が起こる。

寺井 涙活のために泣ける素材を探しつつ、自分も“ひとり涙活”をしていたんですが、自然と心も体も軽くなっていくんです。気のせいかとも思ったんですが、涙活のリピーターさんからも「暴飲暴食がなくなった」とか「初めてダイエットに成功しました」という声が聞こえるようになってきたんです。「やっぱり」と思いました。どうやら、泣くことでストレスが解消され、ストレス発散のために行われていた暴飲暴食がなくなり、ダイエットにつながったようなんです。実際、専門家も涙活が体重コントロールに無理なく取り組める心理状態をつくるのに役立つといってくれています。そこで、このことを「涙活ダイエット」として本にまとめたんです。

涙活によるコラボイベントも画策中

泣く→心の整理→ストレス解消→暴飲暴食減→体重減。普通は想像もつかない連鎖だが、ストレス社会の歪みの一端を感情の抑制が担っていると仮定すれば、なかなか興味深いダイエットメカニズムといえる。この涙活を寺井氏は次なるプランとして、なんと就活にも絡ませようと企画している。

涙活×婚活

旅行会社と組んで「離婚しないために学ぶ婚活ツアー」を展開

寺井 泣くというのは「素の自分になる」ということ。だから、企業の人事担当者とともに泣きながら交流してもらおうという「就活×涙活」イベントを計画しています。人事担当者にとっては、面接では到底知る由もない学生の素の姿を見れるという大きなメリットがあります。学生側も就活うつを涙で解消し、少しでも楽しみながら就活してもらえると嬉しいですね。リクルートならぬ『ナクルート』です。あとは「婚活×涙活」という企画も計画しています。泣くツボが同じというのは笑うツボが同じくらい、相性の上で重要なので、成婚率が高いと確信しています。

試し書きコレクター、離婚式プランナー、涙活プロデューサー。世になかった仕事を飯のタネにする寺井氏の頭の中ではいつもアイディアが湧き出し、浮遊している。そして、それを形にする行動力がある。不思議なことに「一儲けしてやろう」という欲はみじんも感じられない。寺井氏はいう。「ほどほどに食っていければ十分なんです。なにより、どの仕事をしているときも本当にいろんな人が協力してくれる。それはお金に換えられない喜びを僕に与えてくれています」。“無欲のビジネスクリエイター”の働き方は、気の持ちよう次第で、働き方はもちろん、人生さえもいかようにも変えられるんだという強い勇気を与えてくれる。

インタビュー前編:アイディアを形にする方法


寺井広樹◇寺井広樹氏プロフィール
涙活プロデューサー、「涙活」発案者。
「離婚式」の発案者としても知られ、現在までに約200組の式に携わる。
2013年1月から「涙活」をスタート。
現在、泣ける映画、音楽、詩の朗読など毎回テーマを変えて涙活を開催している。
また、泣ける話に特化した人情噺「泣語(なくご)」を発案。
CNN、AP通信、アルジャジーラなどの海外メディアからも注目を集め、世界中に感涙を広めるべく、日々活動に奔走している。
主な著書に『涙活でストレスを流す方法』(主婦の友社)、『泣く技術』(PHP文庫)がある。
涙活Official website:http://www.ruikatsu.com/


〈泣いてやせる! 涙活ダイエット:マキノ出版〉
ruikatu07泣いて痩せる。にわかには信じがたい「涙活ダイエット」。その誕生秘話から実践マニュアル、泣けるコンテンツ集、体験者の声までを網羅した、涙活ダイエットの完全マニュアルといえる一冊。人には喜怒哀楽があるが、現代社会ではどうしても薄れがちではある。そうした中で、「泣く」ということを改めて考えさせてくれる一冊でもある。

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