働き方

【株式会社フェリシモ】部活のある会社の働き方

投稿日:2019年5月31日 / by

<成長できる会社>
フェリシモ入り口
業務とそれ以外の境界線をどこに引くか…。その引き方によっては、社員の自発的な成長を促す効果も期待できる。フェリシモが社内に結成した文化創造委員会。いわば“社内部活”といえるこの制度によって、同社では、ユニークで独創的な活動が、現場発で自発的に行われている。

社内部活はなぜ始まったのか

音楽部の活動風景

音楽部の活動風景

好きなことや興味のあることをやるのは、オフタイム。やっている仕事自体が好き、という人を別とすれば、その辺りが公私の境目となるだろう。フェリシモの文化創造委員会は、そうした公私の境界ラインをなくし、会社公認で好きなことに取り組むことを認めた制度だ。

「当社トップは、従業員との距離が比較的近く、公私に限らずいろいろな話をしています。そうした中で、各社員が普段の業務とは別に得意分野を持っていたり、好きなことがあることに着目し、“名刺の裏に各人のユニークな肩書を書いてみては”と発案。そのような経緯から、部活をそれぞれに結成し始めたのが始まりです」と同社広報担当の市川氏は“社内部活”誕生の経緯を説明する。

いつ活動するのか

ある人は猫好き、ある人は登山好きなど、仕事を離れれば没頭する趣味や活動を持っている人は多い。もちろん、それらは仕事とは無関係であり、やるのは仕事の後や休日。あくまでもプライベートの時間なのだから当然だろう。だが、同制度では時間こそ限定ながら、その境界線を取り払う。

毎週水曜日の午前中。この時間だけは、仕事より部活が優先され、部門ミーティングや商談も基本的には避けられる。もちろん、これだけでは時間は足りないが、不足分は各自の裁量で活動時間をねん出することが許されている。

もっとも、さすがに無条件とはいかない。好きなことに取り組むことが許されてはいるものの、ゆくゆくは同社で扱う商品やサービス開発につなげる必要はある。といっても、予算や目標達成等の条件は緩やか。うまくいかなければ廃部になるが、それでも3人に1人は何らかの部活に参加しており、制度は好意的に受け入れられているといえるだろう。

社内部活のメリット

DIY女子

作業に没頭する女子DIY部員

そのノリはまさに部活そのもので、好きなことを仲間と打ち込む活動にほかならない。それでいて、事業化も視野に入れることで、社内リソースを活用できるという大きなメリットがある。例えば女子DIY部では、サイトを立ち上げ、商品販売等も行っているが、既存事業と連携をとりながら、同社の顧客との接触も可能となっている。また、女子DIYというテーマを切り口に新しい顧客の獲得にも一役買っている。従って、極めてビジネス的なアプローチで“部活”を行いながら、通常業務では体験しづらい、経営感覚に近いスキルも学べるのである。

「当社の社員は普段は当然、予算や目標達成など厳しい条件があります。この制度ではそうしたこととは関係なく、本当に好きなことができます。それをメンバーと力をあわせ、ゼロから実現することで、思いを形にすることができます。既存の組織や役割、上司や部下の関係を超えて挑戦することで得られる何かがあると思います」と同社市川氏は、部活に参加する社員へのメリットを解説する。

部活の参加の有無は人事評価に関与するのか

会社にとっても社員にとってもいい事尽くしにみえる同制度。気になるのは、参加による人事評価の有無だ。参加は強制ではないものの、査定に関るとなれば、その意味あいは違ってくる。その点について同社では「部活動に参加していないことを理由にマイナスの評価をされることはない」(市川氏)とキッパリ。ただし、部活動による成果が著しければ、それは事業化へもつながることであり、自ずと会社の利益に貢献することになる。もっとも、廃部になったとしても評価が下がることもない。

部活を根付かせるために必要なこととは

「部活が目指すのは、個人の生活を豊かにする『文化』の創造」と話す市川氏

「部活が目指すのは、個人の生活を豊かにする『文化』の創造」と話す市川氏

制度として同社にしっかりと根付く文化創造委員会。その背景には、同社に明確な企業理念があることも大きいだろう。「部活が目指すのは、個人の生活を豊かにする『文化』の創造。私たちが売りたいのは単なる『モノ』ではありません。社会における生活文化が豊かにならなければ、何も始まらない。そうした考えから、文化創造委員会は結成されました。部活はテーマのひとつひとつが従業員個人の関心ごとが出発点。個人のリアルな生活体験に根ざした一人一人の想いや志をフェリシモを舞台にさまざまなネットワークとコラボレーションし、形にすることで『ともにしあわせになるしあわせ生活文化』の数々を育みたいと思っています」(市川氏)。

制度や仕組みによって、会社や風土を変革しようとする企業は多い。多くは、うまくいかない状況にもがき苦しむが、同社の事例からは大きなヒントが透けてみえる。形ではなく心をつかむ――。つまり、枠組みだけでなく、人にもしっかりとフォーカスすることで、制度や仕組みは機能するようになる、ということである。ワーカーの価値基準が、お金よりも心の豊かさにシフトし始める中、企業力アップの事例として大いに参考にできそうである。


【会社概要】
社名: 株式会社フェリシモ
英語名: FELISSIMO CORPORATION
創立: 1965年5月(現・株式会社フェリシモは2002年8月に分割設立)
本社所在地: 〒650-0035 神戸市中央区浪花町59番地
資本金: 18億68百万円(2019年2月末日現在)
上場証券取引所: 東京証券取引所市場第一部
代表者 代表取締役社長: 矢崎和彦
連結従業員数 :800名(2019年2月末日現在)
事業内容 :ダイレクトマーケティング事業
連結売上高: 288億82百万円(2019年2月期)
ウェブサイト: https://www.felissimo.co.jp/

 

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