働き方

働く主婦の同一労働同一賃金支持率30.3%は高いのか

投稿日:2016年5月25日 / by

同一労働同一賃金は本当に必要なのか

ある有能な社員がたまたま、同僚の給与を知ってしまう…。以来、その人は、モチベーションが大幅に下がり、パフォーマンスを十分に発揮しているとはいえない状態で働いている――これ実話です。

出来る社員にとって、出来ない社員と給与が同額以下では「やってられない」と思うのは当然かもしれません。仕事の公平な評価は職種にもよりますが、難題です。とはいえ、出来る限り公平でないと必ず問題が発生します。

主婦に特化した人材サービス『しゅふJOB』(事業運営者:株式会社ビースタイル/本社:東京都新宿区、代表取締役:三原邦彦)の調査機関「しゅふJOB総研」が、「同一労働同一賃金」について、主婦会員にアンケート調査(有効回答数719件)しています。その結果からは、実現へのハードルの高さが浮き彫りなっている印象です。

しゅふJOB総研調べ

しゅふJOB総研調べ

まず、賃金について「不公平を感じたことがあるか」については77.9%が「ある」と回答しています。対象が主婦だけに、ほとんどが非正規と考えられ、多くの人が体感として、正社員との“格差”に不満を感じていることが分かります。

では、どんな場合なら、賃金差があっても納得いくのでしょうか。最多は「仕事内容の違い」で77.1%。次いで「責任の重さ」(74.1%)となっています。「内容の違い」は当然として、「責任の違い」が上位に上がっている辺りは、非正規でも結構な責任を負わされていることがにじみ出た結果といえそうです。

しゅふJOB総研調べ

しゅふJOB総研調べ

ここまでの結果からみると、同一労働同一賃金の実現へクリアすべき課題は明確ですが、その道のりは茨となりそうな予感もします。そもそも、主婦ワーカーは、同一労働同一賃金の実現を望んでいるのでしょうか。

しゅふJOB総研調べ

しゅふJOB総研調べ

結果は、「望む」が30.3%、「望まない」が24.9%でした。これだけをみると、望む派が、3割超で優勢ですが、最多は44.8%の「わからない」となっています。単純に、いいか、悪いかの二者択一では括れない微妙な問題であることが透けて見える結果といえるでしょう。

賛成派は「雇用形態に関係なく同じ仕事なら同一賃金であるべき」

具体的な理由をみてみましょう。賛成派は「仕事内容・雇用形態等において、いかなる状態であっても仕事に対する責任の重さは同じ。どの部署であっても、必要な仕事だ」(57歳:パート/アルバイト)、「自分がする仕事に責任を持つのは当たり前。正社員であろうがパートであろうが同じ仕事ならば同一賃金であるべき。会社の夏季休業等一定期間の休暇にパートの場合、給料は支給されない。正社員は、1週間も10日も夏季休業があっても1か月分の給料が支払われる。パートの人にも少し支給があっても良い」(62歳 その他)、「短時間勤務の場合の時給が安くなるのが不公平だと感じる。フルタイムでも短時間でも、一時間あたりにやる仕事が全く同じならば、時給も同じにすべき」(45歳 その他)といった声があがっています。

一方、反対派は「パートで働いていますが、やはり賃金差はあって仕方がないと思います。仕事の内容は別として、パートを選んでいるのは子供の学校行事などに合わせて、時間の融通や残業しても何時まで、など自分の都合の融通を聞いてもらってる分、金額の差があるのは仕方がない」(35歳 パート/アルバイト)、「同じ仕事ができるから同じ賃金じゃないでしょう、ということ。正社員は縛られる度合いが高く、会社とともに成長していくという点で責任感がある。そこを汲まずに同一賃金化していくと、正社員である意味が、責任感をもって仕事をする人が、減る」(45歳 パート/アルバイト)、「今は派遣社員で、社員さんよりも時給は高い。ボーナスはないが仕事内容的に社員でも高額のボーナスではないので遜色ないし、責任も少なく申し訳ないくらい。その分、クビにはなりやすいが、家計の足しに働いているのでそこは割り切れる」(40歳 派遣社員)、「仕事ができない人と同じ給料ってありえない。仕事量があきらかに違うのでやる気なくしました」(42歳 契約社員)。こちらは同じ反対意見でも見方はさまざまという印象です。parttimejob

わからない派からは「雇用形態に関わらず、仕事の出来具合で差があっても良い。(40歳 その他)、「仕事の内容というより、質によって給与が決まれば、パートの主婦でもやりがいをもって仕事に望むことができる」(33歳 契約社員)、「今、パート勤務をしておりますが、役職がこの4月から付き、時給が100円上がりました。100円の差で仕事の量と責任がズッシリ重くなり、逃げ出したい気持ちに駆られることも多々あります。その責任の重さに見合った昇給でしたら、納得出来たかもしれませんが…」(42歳 パート/アルバイト)という悩ましい声が目立ちました。

こうした結果を受け、しゅふJOB総研所長川上敬太郎氏は次のように解説しています。「時間あたりの賃金(時間給)に換算して考えた場合、不公平だと感じたことがあると回答した主婦が8割近くにのぼりました。しかしながら、明確に同一労働同一賃金の実現を望むという声は3割程度に留まっています。同一労働同一賃金の実現に向けてポイントとなるのは、労働に含まれる様々な要素を加味した上で公平感のあるルールを作ることにあると言えそうです。正社員という職能型の労働形態を基本とする日本社会において、同一労働同一賃金の実現難易度は高いと思います。それだけに、表面的ではなく、雇用形態の根本的な在り方まで掘り下げた議論を行う必要があると考えます」。

アチラを立てればこちらが立たず…。横並び意識の強い日本で同一労働同一賃金を実現するには、誰もが納得できるルールづくりが必須。とはいえ、仕事のデキという抽象的なことを、納得のいくアウトプットとして可視化するのは、簡単なようで難しいものです。人工知能を活用すれば解決できるという声もありますが、どれだけ公平でも不満を持つを人はいます。その辺りをどこまで割り切れるか。そこが同一労働同一賃金実現への最大のポイントといえるのかもしれません…。

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