
自分の価値を高め、楽しく仕事をする確実な方法
脳みそを貸すお仕事とは
私は企業顧問という仕事をしています。顧問の仕事内容は人によって違うと思います。私の場合は「月に3時間、脳みそを貸す仕事」という定義をしています。脳みそを貸すと言っても、「はい、どうぞ」と渡すわけにもいきません。
具体的に言うと、月に1回、3時間の会議に参加します。会議の目的は、新規事業の立ち上げ、新商品の開発、新しい販売戦略の立案など。つまりは、何かを変える時や、何かを始める時に、その商品コンセプトや販売戦略を、一緒に考える仕事です。
よく間違われるのですが、コンサルタントではありません。コンサルタントは、教えたり、育てたりするのが仕事。私の場合は、代わりに考えるのが仕事なのです。なぜ「脳みそレンタル」という定義をしているのか。それは、自分の商品を正しく理解するためです。そして、商品価値を高めるため。
そうすることによって、労働時間が短くなるのです。3時間の脳みそレンタル。それが私の商品です。商品価値が低ければ、たくさん売らなくてはなりません。つまり、長時間働かなくてはならなくなる。商品価値が高ければ、販売数を少なく出来る。つまり、長時間働かずに済むわけです。
私が“商品”の加工を他人の手に委ねないワケ
では商品価値を高めるにはどうしたらいいか。本を読む。知識を貯える。勉強をする。いえいえ、脳みそを鍛えるだけでは、脳みそレンタルの価値は高まりません。例えば鉄を鉄のまま売っても、大きな利益にはなりません。加工して、エンジンや、車体にすれば、大きな利益を生み出す。時間もこれと同じなのです。時間を時間のまま売っても、大きな利益にはならないのです。
時間を時間のまま売る。それは、時給と引き換えに、決められた仕事をこなす、ということ。これでは大きな利益を生み出しません。鉄をエンジンに加工するように、自分の時間を加工し、別の商品に変える。私の場合は、時間をアイデアに変える、という作業を行っています。
レンタルに出していない、自分の時間。その時間を使って、いろんなアイデアを考え出すのです。顧問先のアイデアを練ることもありますが、全く関係のない、会社や業界のアイデアも、考えます。頼まれてもいないのに、勝手にアイデアを考える。それが私の商品開発なのです。
勝手に考え、勝手にアイデアを蓄える。そうすることによって3時間の、脳みそレンタルの価値が高まるわけです。自分という商品を、自分自身で加工する。自分の加工を、他人の手に委ねない。それが、最も確実に、自分の価値を高める方法であり、もっとも楽しく、仕事をする方法でもあるのです。
<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。