働き方

3人目妊娠で退職を決意した私が“きちんと育児を出来ない母親”を卒業出来たワケ

投稿日:2017年7月6日 / by

なぜ育児と仕事の両立は簡単でないのか…

「仕事と子育ての両立」を模索されている女性は多い事でしょう。2人のお子さんを育て、3人目のお子さんの出産を控えながら介護職をされていた、ライターのとどろきさんは、育児と仕事の両立を「想像以上に大変」と振り返ります。自分の感情を押し込みながら仕事に邁進していた、という彼女はどのようにして子どもと向き合う時間を得られたのでしょうか。(powered by THE LANCER編集部)

社会で働く母親に求められる社会的責任の重さは想像以上

女性の社会進出が増えているとはいえ、男性的な社会構造は強く残っています。勤勉な日本人は、勤勉であることが当たり前なので、当然のように相手に勤勉な姿勢を求めるのだと感じています。その勤勉な姿勢が日本経済や社会を動かすパワーになっているのもまた事実ではないでしょうか。

一方で、真面目で一生懸命な社会だからこそ、働く母親は、会社や同僚に子どもを理由に迷惑にかけてしまうことに対して引け目を感じてしまう側面もあるのかもしれません。

筆者が直面した現実として、母親が働くというのは想像以上に大変です。子どもの熱でお迎えの電話が来れば、周囲に頭を下げて仕事を申し送ります。子どもの責任は親にあると口では言う人も、いざ仕事のしわ寄せがくると嫌な顔をする。そんな負のジレンマに陥りやすいからこそ母親は必死に育児と仕事を両立しようとしているのです。

一人目を妊娠した時に上司から言われた言葉

私が第一子を妊娠したのは当時4年目で介護施設のフロアを初めて異動した頃でした。つわりがとにかく重く、食事もままならない日々でしたがどうにか這うように出勤していました。ある遅番勤務の休憩中に感じた事のないような腹痛を感じ、フロア上司に相談。

その時に上司から言われた言葉は衝撃的でした。「妊娠は病気じゃない。誰もが経験することだからちゃんと頑張りなさい。こんなことじゃお母さんになれないよ」。

つわりは甘え? 一度はその言葉を受け止めたものの、腹痛は酷くなるばかり。結局早退を願い出ました。この上司とのやり取りは、もちろん仕事をする上では正論です。

そもそも介護職は人手不足が深刻ですし、特殊勤務の人が休むと勤務を組み替えなければならない上に他の勤務者にも迷惑がかかります。そう理解はしてみたものの、やはりその言葉がしこりのように心の隅に残っていました。

私は結局、赤ちゃんを守るために入院となりました。そして産休が空けて復帰してからは、子どもがいることで「文句を言われないために仕事に打ち込む」ようになりました。

介護の仕事は不規則勤務があるので、子どもは必要に応じて実家へ預ける必要があります。けれども、気が付けば2日会わない日がある、一か月の半分が子どもと過ごせない……もちろん仕事としては充実していました。

でも子供を抱えて働くってこういうことなのか、何の為に働くのだろうかと疑問を抱きつつ、そんな感情すら仕事の忙しさから心の奥底へ押し込める日々でした。

3人目を妊娠したときに、話してくれた上司の言葉

2人目の出産・産休明け、私にとって4人目の上司となった女性。彼女のすごいところは「上司として言わなければいけないことはここまでね。ここからは上司ではなく私の言葉だから聞いてね」、とミーティングで管理職と自分自身を線引きし、2つの意見をはっきりと話す人でした。

彼女は責任ばかりを求める上司ではありませんでした。「子どもが具合悪いと電話あったでしょ。私があと手伝うから」と言ってくれる人でした。早退の申し訳なさから残りの仕事を片付けていると怒られたこともありました。

そんな良い上司に恵まれ、相変わらず子どもは預けっぱなしで勤務中心の生活でしたが、以前より少しだけ育児に向き合えるようになったのを感じ始めた頃、3人目を妊娠。一番上はもうすぐ小学校。今まで同じ保育園に通っていたからこそ実家と距離があっても通用した子どもの送り迎え依頼。

でも子ども3人がそれぞれの環境に分かれてしまうと本当にこのままでいいのか考えるようになりました。育休か退職かで迷っていることを相談すると上司自身の経験談を話してくれました。

役職に就いているので、当然のように勤続年数が長いのかと思っていましたが、出産のために退職をして、パートでスーパーのレジ打ちもしたことあるよ~と話してくれました。

「だから育児のために辞めるのも一つの選択肢だよ。別に今の仕事がすべてではないから。あ、これは私が話したこと内緒だよ(笑)」。そう話してくれた上司は間違いなく先輩母親として話してくれていました。

育児の為に仕事を辞めるということそのものを受け入れられず、いつの間にか仕事をすることに肩肘を張り、仕事以外の選択肢すら持てていなかった自分の目から鱗が落ちた瞬間でした。

子どもを望んだから何かを諦めるのではなく、折り合って生きるという事を知る

私は主人と相談し、退職を決意しました。そして退職ぎりぎり、臨月前日まで出勤しました。とても楽しく毎日を過ごすことが出来ました。ワーキングマザーが抱くという「外で働きたい」という感情もなく、現在も育児に専念出来ています。

そして産後半年にたまたまクラウドソーシングを知り、自分の社会的存在をネットの中でも求めたくなり登録。育児の合間に細々とライターの仕事を請け負い始めました。最初は安い単価だった記事執筆も、今では徐々に高単価の仕事を取得出来るようになりました。

現在、上2人が幼稚園・小学校に行っている間に1歳の子どもと過ごしながらライターとして仕事をしています。仕事のスケジュールは無理のないように調整でき、子どもに寄り添うことを優先できるライターはまさに天職といえます。

自分の生き方を見直すチャンスをくれたのは、「育児は今しか出来ないから」と退職についての相談に乗ってくれた上司と働き場所を作ってくれたクラウドソーシングのおかげ。今後は本格的なライティングを目指してライター養成を受ける予定です。

働くことは良いことだと思います。でも私のように仕事に捉われ過ぎず子どもをしっかり見たいと思う人だって世の中には多いはずです。

フリーランスの知名度だけでなく働き口の門戸が広がれば、女性の社会浸透度も仕事の幅だって今よりもっともっと上がるのではないでしょうか。

私のように育児より仕事を取らざるを得なかった母親でも、フリーランスの要素を含んだ仕事が出来れば、ほんの数時間でも保育園ではなく自宅で育児が出来ると思います。

それは回りまわって待機児童問題の緩和にも繋がるのかもしれませんね。フリーランスは、まさに今の時代にふさわしい働き方だと実感しています。社会の活性化という点でも、良い手助けになるのではないでしょうか。私はそう期待したいです。
▽フリーランスの情報発信メディア「THE LANCER」より転載

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