働き方

モヤモヤした正社員生活と決別し、“兼業”で夢の実現へまい進するヨガ講師の日常

投稿日:2017年7月26日 / by

目標の達成×派遣で実現する充実ライフ

ヨガ講師 漆原真理さん

企業に所属せず、フリーランスとしてわが道を進むビジネスパーソンが増加傾向にある。価値観の多様化やテクノロジーの進化による環境整備などが、そうした潮流を後押している側面もある。だが、収入の安定が保証されているワケではもちろんない。こうした不安定さを軽減する選択肢のひとつして「派遣」が注目されつつある。フリーのヨガ講師として活動する漆原さんは、その活動と並行し、リクルートスタッフィングに登録。派遣社員として週2日働いている。不安定なフリーの収入を、派遣での就労で補うためだ。

ヨガ最優先の生活の中で派遣がもたらすもの

漆原さんが派遣社員としてデスクワークに従事するのは週2日。それも、それぞれ5時間ほどの短時間勤務だ。週2日ながら、フルタイムとしていないのは「フルタイムでは働きたくないので」という、あくまで自身のライフスタイルを最優先した結果。派遣で働く時間以外のほとんどは、フリーで活動するヨガ講師のために割いている。

「フリーのヨガ講師として活動を始めてまだ1年ほど。コネクションもない中で始めたので、ネットワーク作りや勉強もたくさんしなければいけません。でも、いただける仕事はできる限りこなしたい。だから、派遣社員として働くのは、いまの時間でちょうどバランスが取れる感じです。もちろん将来的には派遣をゼロにして、ヨガだけにシフトしたいと思っています」と漆原さん。現在は、ヨガ最優先で、派遣は自立できるようになるまでの補助。だが、現状の不安定を中和する意味でもその存在は心を安定させ、生活にゆとりを与えている。

派遣で働く時間を最小限とすることで、ヨガの時間をたっぷり確保する漆原さん。とはいえ、朝ヨガがある日は4時起きもあり、そのまま夜までスケジュールが埋まる日があるなど、なかなかハードだ。合間には家事の時間もある。だが、その表情は疲労感どころか、イキイキしており、全身から充実感があふれている。

ほとんどの期間をモヤモヤのまま過ごした正社員時代

やりがいを見失い、ズルズルと仕事をつづける人とはまるで正反対の前向きで主体性のある仕事との向き合い方。「好きなことだから」の一言では片づけられないストイックでひたむきな姿勢には感服するが、ほんの数年前まではその心は曇り、表情も暗いモヤモヤの日々が続いていたというのだから信じられない。

その当時、決して、従事している仕事に不満があったわけではない。専門商社での営業アシスタント業務で、会社からの評価も高かった。雇用形態は正社員で、「安定」という面では、フリーランスとして働くいまとは比較にならないほど恵まれた就労環境。一体なぜ、その心は霧がかかったようにモヤモヤしていたのか…。

漆原さんが述懐する。「就職して数年した頃から、このままでいいのかなという思いが募ってきました。でも、きっかけもなく、ズルズルと働き続けていました。やっている仕事で一番を目指したり、なんとかモチベーションを持って取り組んではいたのですが…」。就職後、会社の全体像が見えてくると多くの会社員が陥るジレンマといえるかもしれない。何のために働いているのか…。真剣に将来を考えるほど湧き上がる、ある意味健全な心の葛藤といえるだろう。

父の死を引き金にモヤモヤ人生と決別

転機が訪れたのは、28歳の時。父親の死が引き金となった。「まじめを絵に描いたような銀行員の父が、闘病の末なくなったんです。真面目な父らしい最期だったのですが、その姿をみていて仕事ってなんだろう、人生ってなんだろうって思って…。ずっとモヤモヤしてたのですが、その時に、一度きりの人生だし、自分らしく生きようと、踏ん切りがつき、退職を決断しました」。実直に働き続けてきた父の最期をきっかけに、漆原さんは自分らしく生きることに踏み出した。

長い葛藤があったからなのだろうか。目の前の霧が晴れ、スイッチの入った漆原さんの行動は早かった。もっとも、ほどなく退職したものの、当てがあったわけではない。ご主人も唖然としたそうだが、無理もないだろう。漆原さんが、第二の人生として選択したのは、フリーのヨガ講師。退職前に何となく始めたホットヨガで、やるほどに変わる自分に魅了され、その道でやっていこうと決断する。「食っていける」ということはともかく、自分が自分らしく生きていける職業。その確信だけはあった。

やると決めれば行動は大胆だ。インドへ短期留学し、資格を取得。ヨガスキルに磨きをかけ、講師としての基礎を固める。そして、ヨガ講師としての活動をスタート。以前のモヤモヤがなくなり、ハッキリと先の見える第二の人生の幕が開いた。当然、収入は少ない。経営は“赤字”が続く。だが、安定が保証されいても、心の晴れない会社員時代を長く経験した漆原さんにとって、この状況が苦になるハズがない。むしろ、あらゆることが心地よく感じられた。そうした心の余裕が、「ヨガ講師+派遣」という合理的な判断を後押ししたのかもしれない。

自分で動くことでしかたどり着けない自分らしい生き方

「正社員時代には考えませんでしたが、いまは派遣というスタイルがすごくありがたく感じています。なぜなら、私が正社員時代に培った事務のスキルを活かせる仕事があり、それを自分の都合に合わせた時間で働けるからです。本当に自分にあった働き方だと思います」と漆原さん。1週間で計わずか10時間ほどの短時間勤務ながら、漆原さんはいま、ヨガ講師と並行し、派遣のメリットを最大限に活用しながら効率的に働いている。

派遣は不安定。一般的にそう思う人も多いかもしれない。だが、正社員が本当に安定なのか。そうだとしても、そこに「やりがい」や「充実感」がなくても本当にいいのか…。仕事だからと割り切って、定年まで勤め上げることは否定しない。それも一つの生き方の選択肢。とはいえ、やりたいことや夢を犠牲にした「安定」に何の意味があるのか。葛藤の末に漆原さんが取った行動に、「ハッ」とする会社員は決して少なくないだろう。

「私みたいな人間でもこんな風になれる。そう伝えながら、頑張っていきたい」。控えめにそう語った漆原さん。その先にハッキリとゴールの見える人生を歩むその眼は、イキイキと輝いている。正社員に見切りをつけ、自分らしくいられる職業を選択し、目標に突き進む日々は、まさに人生の充実そのものだろう。

価値観は人それぞれ。ただ、確実にいえることがある。自分らしい生き方は、自分で決断し、行動しなければ手に入らないということだ。とりわけ目の前に霞がかっているビジネスパーソンにとって、漆原さんのここまでの足跡から得られるヒントは数多いのではないだろうか。


■プロフィール 漆原真理(うるしはらまり)
全米ヨガアライアンス200取得
インド政府公認ヨガ講師
長いOL生活で毎日をこなす日々に疑問を感じていた中で、何となく始めたホットヨガ。身体が変わっていく過程が面白く、気づけばヨガの仕事がしてみたいと気持ちにも変化が起こる。身体や気持ちだけでなく、自分に正直に【なりたい私】になろうと決意。思い切って本場インドで生活全体を通したヨガを学ぶ。現在は都内を中心にフリーで活動する。なりたい自分に今の自分を少しずつ確実に近づいていく過程を大切に、自分自身がより良く変わっていけることをヨガをツールに私らしく伝える。

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