
人間とは、金の卵を産むガチョウである
変人・安田の境目コラム
金の卵を産むガチョウは本当に存在するのか…
金の卵を産むガチョウを、ご存知でしょうか。毎日1個、金の卵を産んでくれるガチョウ。でも欲に目がくらんだ飼い主は、何とそのガチョウを殺してしまうのです。
ガチョウを殺せば、中からたくさん金が出て来る。飼い主さんはそう考えたみたいです。かなり頭の悪い飼い主さんですよね。でも、私から言わせれば、まだマシなほうです。
世の中の多くの飼い主さんは、もっと頭が悪い。金の卵を産むガチョウを、売ってしまう。あるいは、食べてしまう。それも、ただのガチョウとして。
なぜそんな馬鹿な事をするのでしょうか。それは、金の卵を産ませるには、工夫がいるからです。そんな無駄な事に、時間をかけていられない。そのまま売ってしまうのが、一番手堅い。そう考えているのです。
もし、金の卵を産むガチョウがいたら。自分だったら、絶対にそんなことはしない。しっかりと育て、お世話をし、毎日1個金の卵を産んでもらう。自分にはそれが出来る。多くの人はそう考えています。
そして同時に、こうも考えています。でも、金の卵を産むガチョウなんていない。そんな話は絵空事。毎日コツコツ働くしかない。それこそが、堅実な生き方なのだ、と。
なぜ金のガチョウを売ってしまうのか
当たり前の話なんですけど、金のガチョウを殺した飼い主は、知らなかったんですよ。殺しても金なんか採れないということを。売ってしまった飼い主も、知らなかったんですよ。金の卵を産むガチョウだということを。
知っていれば、殺さないし、売ったりもしません。知らないから、殺してしまう。知らないから、売ってしまう。実際みんな、そうなんですよ。
実は、金の卵を産むガチョウは、います。そこら中にいます。金の卵を産むガチョウとは、人間のことなのです。そう、私たちが、金の卵を産むガチョウなのです。
実際のところ、ガチョウは金を産みません。でも人間は、いくらでも金を生み出します。
新しい商品を考えるのは人間。新しい遊びを考えるのも人間。新しい価値を生み出すのは人間。そして人間の私。
にもかかわらず、私たちは自分を売ってしまう。正確には、売っているのは自分の時間です。
金の卵を産むとも知らずに、安い値段で売ってしまう。金の卵を産むとも知らないで、そのまま料理して食べてしまう。何とも、もったいない話です。
「人間とは、金の卵を産むガチョウである」。
By安田佳生。
<プロフィール>安田佳生(ヤスダヨシオ)
1965年、大阪府生まれ。高校卒業後渡米し、オレゴン州立大学で生物学を専攻。帰国後リクルート社を経て、1990年ワイキューブを設立。著書多数。2006年に刊行した『千円札は拾うな。』は33万部超のベストセラー。新卒採用コンサルティングなどの人材採用関連を主軸に中小企業向けの経営支援事業を手がけたY-CUBE(ワイキューブ) は2007年に売上高約46億円を計上。しかし、2011年3月30日、東京地裁に民事再生法の適用を申請。その後、個人で活動を続けながら、2015年、中小企業に特化したブランディング会社「BFI」を立ち上げる。経営方針は、採用しない・育成しない・管理しない。最新刊「自分を磨く働き方」では、氏が辿り着いた一つの答えとして従来の働き方と180度違う働き方を提唱している。同氏と差しで向き合い、こだわりの店で食事をし、こだわりのバーで酒を飲み、こだわりに経営について相談に乗ってもらえる「こだわりの相談ツアー」は随時募集中(http://brand-farmers.jp/blog/kodawari_tour/)。