
熱血上司と危険な上司の表裏一体の危険な関係【瓦版書評】
職場を嫌な場所にする元凶とは
退職者の離職理由で常に上位にランクインするのは「人間関係」。同僚や上司などとの関係がうまくいっていないと仕事が楽しくないし、そもそもできるだけ職場にはいたくなくなってしまう…。職場が、人と人とのつながりで成り立っていることを考えれば、そこが破たんすれば離れたくなるのはある意味当然かもしれない。

日本経済新聞出版社:見波利幸著
破たんした人間関係が、同僚とならまだ救いはある。極端なハナシ、一切口を利かなければ、何とかやり過ごすことは可能だからだ。問題は、上司との関係がおかしくなった時。パワーバランス上、反論は難しく、理不尽でもなんでも命令には簡単にそむけない。当然、評価との連動も避けられず、居心地はますます悪くなる。酒場で愚痴を吐き出すにしても、気休めにしかならず、一時のストレス発散にしかならない…。
上司の“攻め方”や部下となる社員の耐性次第では、心を病んでしまうことも珍しくないだろう。職場は選べても上司は選べない、とはよく言われるが、性質の悪い上司や相性の悪い上司のもとで働くことになれば、職場はもはや、地獄の様に苦しみしかない場所となりかねない…。
先日発覚した、女子レスリング五輪4連覇の伊調馨へのパワハラ疑惑。伊調が練習場を変えて以降、パワハラが繰り返されたという。事態は、伊調側が日本レスリング協会の栄和人強化本部長を告発するまでに発展。栄氏は、「しっかり見守ってきたつもり。こんなことを言うとは思えない」と話しているそうだ。両者間のギャップは、上司と部下の関係で考えれば合点がいく。つまり、部下の気持ちを一切汲まない上司の一方的な“愛情”の押しつけだ。
職場を壊す上司への対処法
本書は、こうした無自覚に“職場を壊す”上司のタイプを4分類し、その対処法を提示。不幸にも危険な上司の元で働くことになった人へ、少しでも働きやすくするヒントを与えてくれている。
突然怒りだす激情型、ロボットのように感情がない機械型、自分の優秀さをアピールし続ける自己愛型、部下を出世の道具としか考えていない謀略型…。なぜこれほどの人格破綻者が出世するのかにこそ問題がありそうな気もするが、確かにどのタイプも一度はみたことがあるような気がする。いずれのタイプもそれぞれ猛烈な毒を帯びているが、共通するのは、相手の立場に立って物事を考えられないという点だ。
危険な上司は、<相手の立場に立って物事を考えられない>。そうだとすれば、その対策は防御というより、緩和する方が賢明だ。力任せに向き合っても消耗するだけだからだ。上司と部下というパワーバランスでは、やり過ごすのも簡単でないかもしれない。だが、しっかりとタイプを見極め、その背景を知れば、圧力の体感を弱めることは可能だ。産業カウンセラーでもある著者のタイプ別対処の仕方の章は、それを実践するヒントが凝縮されている。