働き方

正社員登用後すぐに産休申請。会社は却下できる?

投稿日:2019年1月22日 / by

派遣から正社員登用されるや産休申請に幹部が激怒

ある会社に勤務するSさん(40代・女性)は、同じ部署に勤務する20代の女性社員に憤りを感じています。その理由は2ヶ月前に派遣から正社員登用されたその女性が妊娠し、産休を申請してきたから。

Sさんや会社の人事は、その事実に驚くとともに処遇に頭を悩ませており「仕事も覚えないうちに産休とは何事か」と怒る幹部もいるそう。正社員に推薦した人物については左遷することを検討中で、産休を申請してきた女性についても、「却下できないか」と考えているとのことです。また、部署内に不満の声があるといいます。

このような場合、会社は女性社員に産休を与えなければならないのでしょうか?法律事務所あすかの冨本和男弁護士に見解を伺いました。(powered by シェアしたくなる法律相談所

Q.派遣から正社員登用されてすぐ妊娠し産休申請…却下することはできる?

A.できません。

冨本弁護士:「結論から述べますと、産休を与えなければならないでしょう。労働基準法は、6週間以内(双子の場合は14週間以内)に出産する予定の女性が休業を請求した場合、その者を就業させてはならないと規定しています(同法65条第1項)。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則は、女性労働者が妊娠中である場合、女性労働者が妊婦健康検査を受けるために必要な時間を確保しなければならないと規定しています(同規則2条の4)。

同規則は、妊婦健康検査を受けるために必要な時間の確保についての目安についても定めており、以下のように定めています(同条第1項)。

・妊娠23週までは4週間に1回
・妊娠24週から35週までは2週間に1回
・妊娠36週から出産までは1週間に1回
・医師等がこれと異なる指示をした場合はその回数

妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成9年労働省告示第105号)という
のもあり、担当の医師等の指導がある場合、妊娠中の女性労働者について休業等の措置を講じるべきであることも定めています。

以上は、これから母親となる女性労働者を保護するためです。派遣から正社員になっただとか、まだ仕事も覚えていないといった事情によって否定されるようなものではありません」

Sさんの気持ちも理解できないものではありませんが、これから母親になる女性労働者は保護されるべき存在。会社の「事情」に左右されることがあってはなりません。」

▽オリジナル記事はコチラ

◆関連記事
自分の妻に上司との不倫歴があったことが発覚!離婚事由として認められるの?
接待で連れて行かれたキャバクラで不倫に発展…。会社は慰謝料を支払うべきなの?
交通違反をしたのに反則金も呼出状も無視し続けたら、どんな罪が待っている?


*取材協力弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー)

*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)

読み物コンテンツ

働き方白書について
仕事相談室について
極楽仕事術について
三者三様について
戦略的転職について
用語集について