
天職創造プロジェクト~自分らしく働くために~(1)
就職をより良い出会いにする工夫 Vol.1
「入社内定者家族向け会社説明会」
(株)Positive dream persons
〈自分が自分らしく力を発揮できる仕事〉。それをある種の「天職」と定義しよう。その場合、どうすれば、天職にアプローチしやすくなるのか…。最初から好きを仕事にする場合、結果的にそうなる場合、あるいは自らの努力で創りだす、という到達の仕方も方法のひとつかもしれない。瓦版では、企業の取り組みの中から、よりふさわしい職場としての天職への道を探る。一回目は(株)Positive dream personsの取り組みから、若き社会人の「天職」を考える。(全三回)
なぜ親向けに会社説明会を開催するのか

社長の会社説明に熱心に耳を傾ける内定者の保護者
猛暑の東京で、ある会社説明会が開催された。会社の歴史から実績、方向性など、社長直々の濃密な説明が2時間にわたって行われた。出席者は、真剣に耳を傾け、満足げにうなずいているーー。
よくある会社説明の一コマといえるが、参列者の年齢層が高い。実はこの会社説明会、ホテル、レストラン、ウェディング等の事業を手掛ける(株)Positive dream personsが行った2015年度入社内定者の家族へ向けたもの。今回で6回目で、同社ではすっかり定例行事になりつつある。
「ベンチャーから成長し、18期目を迎えましたが、親に会社を説明してもなかなか分かってもらいづらいという声がありました。そこで、少しでも親御さんに会社のことを理解し、知ってもらおうとこうした機会を設けることにしました」と同社杉元崇将社長は開催の経緯を説明する。
「子供」とは言ってももう立派な社会人。こんなところまで親が出てくるのはどうなのか、という見方もあるかもしれない。しかし、説明会はあくまでも企業側の主催。親からの要望を受けてのモノではない。出席義務もない。それでも毎回多くの親が、遠方も含め、会に出席し、安心した顔で会場を後にする。
「正直、子供とは言ってももう社会人だし来ていいものかとも思いましたが、来てよかったですね。こんな風に説明してくれてやっぱり我々の時代とはいい意味で変わってきているなと感じます。娘がやりたいことも良く分かったし、素晴らしい取り組みだと思います」と出席したある親は、感想を話した。 決して過保護という次元の話ではない。
親が会社を理解する大きな意味とは
開催の目的には、昨今の若者の定着率の低さに対する一つの解決策としての意味合いも含まれている。 「自分でしっかりと意思決定できる人ももちろんいるが、概して若者はそうした経験が少なく、困惑する場面も多いと思います。そうしたときに、仲間はもちろん、親の理解や支援、サポートが重要になってくると思っています。この会が、そうしたことの一助となればと思っています」と杉元社長は、新入社員にとっての家族の意味を重要視し、的確に支援するためのタネを提供する場として、会に期待している。
確かに、仕事におけるトラブルや悩み事を親に相談することはあまりない。「もう社会人だから」という自負や「言っても仕方がない」という諦観もその要因かもしれない。しかし、親は同時に社会人としての先輩でもある。説明会で会社の状況を聞いていれば、ある意味では先輩社員よりも的確なアドバイスがもらえるかもしれない。

過保護というよりもより良い就職を実現するための一環
いずれは実家を出て独立するにしても、自宅を拠点に働いているなら、家族がアドバイザーになってくれれば、未熟な社会人にとって、これほど心強い存在はいないだろう。少なくとも不安定な入社後3年間をそうした環境下で過ごせれば、離職率低下が期待できるだけでなく、仕事に対する正しいフィットの仕方にもつながる可能性がある。
PDPは、入社までに企業理念のすり合わせを内定学生と入念に行う。だからこそ、入社後には誰もがいきいきと働き、飛躍していく。それでも、思い通りに仕事が進まないなど、困難にぶち当たることはあるだろう。悩んでいる社員に同僚が声をかけることももちろん力になる。加えて、親からもなんらかのサポートが受けられるとなれば、仕事に対し、冷静な判断ができることもつながる。
自分が自分らしく力を発揮できる仕事ーー。それは、経験に乏しい就職間もない社会人にとっては、簡単に手に入れることは難しい域だろう。だが、会社の中で、仲間と助け合いながら、そして家族の支えも受けることで、着実にその土台は固まっていくはずである。若者にとって、決して恵まれた経済状況ではない日本だが、「家族」という最も身近で頼りになる“サポーター”を巻き込むことで、ただの仕事が、「天職」へと変わる可能性はグっと高まるハズである。