働き方

50代で行き詰らないための5つの心構え

投稿日:2016年4月13日 / by

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<NTTコミュニケーションズ>
たった一人で50代社員数百人とヒアリング
HR部人事・人材開発部門担当課長 浅井公一氏

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天から与えられた一生をかけてやり遂げなければならない命令--。それが「天命」の意。50歳の別称でもあるが、現実には、なにかと悩ましい年代となっている。NTTコミュニケーションズは、ちょうど50歳の非管理職を対象に、人事担当者が個別のヒアリングを実施。対象は500人(その上司150人と50代の希望者含む)に上ったが、なんと対応したのは、たった一人の担当者だ。その理由や狙い、そして今後について、任を担ったHR部人事・人材開発部門担当課長の浅井公一氏に聞いた。

なぜ50歳をヒアリング対象にしたのか

会社員の40代、50代はいま、逆風にさらされている印象が強い。「逃げ切り世代」の境界ともいわれる。バブル期と景気低迷の狭間で、企業も方向転換を迫られる中、どうしても微妙な立ち位置になるからだ。そんな中で、同社が実施した、50歳を対象にした個別ヒアリング。その狙いは、どこにあったのか。

「もともとは副社長から、50歳の社員の実態はどうなのか知りたい、ということで調査はスタートしました。50歳というのは、年金受給時期の延長に伴う退職再雇用により、あと10年が15年にスライドする年齢。もう少しで定年というゴールが、いきなり1.5倍になる影響は少なくないものもあるだろうということで、腹を割って話す機会を設けたということです」と浅井氏は経緯を説明する。

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50歳の社員は、同社において、構成比の高い層。原動力として、まだまだ頑張ってほしいという期待が会社側にはある。一方で、自身の評価や処遇に対し、不満を抱えている人も少なくない世代でもある。加えて、再雇用により60歳定年が65歳にスライドしたメンタル面での影響も大きいと考えられ、さらなる奮起を促す意味でも、“実態調査”の必要があった。面談前にはキャリアデザイン研修を実施し、自身を振り返る機会も設けた。

1対数百人のヒアリングにした理由

大きなミッションを受けた浅井氏は、ひとつの決意をする。350人の対象者と1人で対面することだ。理由は、ナーバスな部分にも踏み込むだけに「いろいろな人の視点が入って混乱させることは、よろしくない」という判断からだ。さらに、自身もほぼ同世代であり、50歳を過ぎて昇進を果たしており、対象者のロールモデルのひとつとして、自身のキャリアが活かせるとの考えもあった。

大企業ながら、こうしたウェット感あふれる配慮が功奏したのか、シニア社員との対面は、比較的順調に進む。心を開くまでに時間を要するケースもあったが、ほとんどが同僚感覚で胸の内を明かし、浅井氏の言葉にもシンクロしてくれた。全員との対面が終わるころには、社内に明らかに違う風が吹き始めていた。基本1回約30分×350人。費やした時間は無駄ではなかった。

細かい配慮が生んだ確かな成果

具体的な成果もでた。約半数がTOEICの勉強を開始、若手向けに勉強会を開くベテラン社員も増えた。上司に行ったアンケートでは、ヒアリング実施後、「変化があった」との回答は79%に達した。こうした行動変容は、言われた直後は、誰しもが前向きなため、チェックはあえて面談から3か月後に実施。その上での結果だけに、ヒアリング対象者の気持ちの変革はホンモノといっていいだろう。

人事部門担当部長の奥田智行氏は補足する。「弊社では新人の時代から各年代において個別面談は綿密に行っている。ただ、年代が上がるにつれ、どうしてもそうした機会が減っていく部分はある。50代ともなれば、自立という部分もあり、薄くなりがちだ。そうしたこともあり、今回、あえて50歳を対象にしたという側面はある」。この説明から透けてみえるように、個別のコミュニケーションは、年代を問わず、組織運営においては非常に重要ということが改めて分かる。

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同社の取り組みは、会社に元気にするアクションに与えらえるグッドアクションでも特別賞を受賞した。(左端下が浅井氏、右端下が奥田氏)

成果を引き出したベースの潜在力

ただし、同社の事例をもって、単純に個別面談が現場活性化につながると考えるのは早計だ。なぜなら、同社は、分社化の過程で新しい領域のビジネスに挑戦するための人材を集めた組織だったという背景がある。つまり、途中のキャリア形成プロセスで、ボタンのかけ違いがあったとしても、もともとは優れた能力があり、前向きな気持ちも密かには持ち続けている集団と考えられるからだ。

「実は面談前のイメージでは、ネガティブな人が過半ではないか と予測していました。しかし、結果は真逆でした。いい意味で裏切られましたね。やはり、もともと優秀な人たちですから、思考はポジティブですし、熱いものを秘めていました」と浅井氏。あくまで1人でやり通した浅井氏のやり方も無関係ではなさそうだが、同社においては50歳社員の実態は、一般的な50代のイメージとは異なる、会社をけん引するに足る、あふれんばかりのバイタリティを秘める人間の集まりだったといえそうだ。

一定数いたネガティブ層に見られた特長とは

もっとも、前向きな人が多くを占めた一方で、ネガティブな人も一定数 いたというのもまた事実。どんな組織にも必ず、こうした層もある程度は存在するものだろうが、恵まれた環境にあってなぜ、両者間にそんな差が生じてしまったのかは気になるところだ。

「前向きな人は、常に問題意識を持ち、技術の進化に対応するための勉強も怠らない。自分が何がしたいのか、すべきかが明確なんです。不満を持っていたりもしますが、ちゃんと自分なりの価値観を持っている。一方、ネガティブな人はこのままでいい、という現状維持だけで何も変えようとしないし、課題も見出そうとしない。私の立場から言えば、前者にはいろいろ提言もできますが、後者には何も言いようがない…」(浅井氏)。

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50代で行き詰らないための5つの心構え

天命を知るとされる50代。まさに、それが出来ている人とそうでない人で、大きな差が生まれてしまう…。50歳を迎えてもなお、一生をかけてやり遂げたいことがみつからない人生は、本当に厳しい。体力は衰えても蓄積された経験やキャリアによって気力だけは溢れる年代のハズだ。人生の集大成へ向かう大事な年齢で行き詰るのは、残念というしかない。そうないために、なにか術はないのか。浅井氏の言葉から、5つの心構えが浮かび上がってくる。

1:自分の価値を見出す
2:コミュニケーションを怠らない
3:精進を怠らない
4:専門性に磨きをかける
5:プライドを持ち続ける

どれも当たり前のことだが、特に2、3、5は、キャリアを重ねるプロセスで、軽視されたり、緩慢になりがちな部分ではある。その意味では、自問自答や自己研さんも大事だが、上司や先輩、同僚に後輩といった多様な層とのコミュニケーションを積極的に行い、感覚が鈍っていないか、ずれていないか、などをさりげなく随時自己チェックすることは有効といえそうだ。「自分の価値」などは、案外、第三者の方がよく見えたりすることもあるので、なおさらだ。

日本の人事システムの中では、ピラミッド構造がいまだ主流だ。そこでは、出世争いはモチベーションと強く連動する。その出世競争の枠は、歳を重ねるごとに狭くなるだけに、その分、そこからあぶれる者が出る。だが、それで会社員人生が終わるワケではない。さらに言えば、年齢だけで全てが閉ざされるわけでもない。同社の様な“働きかけ”があれば踏み出しやすいが、たとえなくとも、個々が自身の価値や役割をしっかりと認識し、ブレることなくそこを追求していけば、そもそも行き詰っているヒマなどないハズだ。


◆グッドアクションで表彰
同社のこの取り組みは、(株)リクルートキャリアが運営する社会人のための転職情報サイト、リクナビNEXT(http://next.rikunabi.com/)が主催する「第2回グッド・アクション」で現場活性化部門の「ベスト・アクション」を受賞。専門家からも高い評価を受けた。同社では、一定の成果が見られたこの取り組みを今後も継続。さらに検証を重ねながら、増加傾向にある外国人社員なども含む、組織の多様性を考慮し、さまざまな層へも落とし込み、現場活性化に活かすことを検討している。


【会社概要】
NTTコミュニケーションズ オフィシャルサイト名称:エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
本社所在地:〒100-8019 東京都千代田区内幸町1丁目1番6号
代表取締役社長:庄司 哲也
営業開始日:平成11年7月1日
資本金:2,117億円
従業員数:
6,500人(NTT Comグループ:21,500人、2015年 3月現在 )
事業内容:電気通信事業等

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